地球ことば村
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【地球ことば村・世界言語博物館】

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シンポジウム「多言語社会 日本」1

本ページの目次


プログラム

概要

プログラム

  1. 開会挨拶:ことば村理事長 阿部年晴「言語の多様性-人類の大切な遺産」(13:00-13:10)
  2. 司会:金子 亨「ヨーロッパの経験と日本の少数言語政策」(13:10-13:30)
  3. 報告1:山川智子「多言語社会ヨーロッパの言語政策」(13:30-14:10)
  4. 報告2:佐野 彩「ヨーロッパの地域・少数言語の事例―フランスのサヴォワ語を中心に」(14:10-14:50)
  5. 報告3:中川 裕「アイヌ語再活性化の現状」(15:00-15:40)
  6. 報告4:下地理則「琉球語宮古方言の再活性化」(15:40-16:20)
  7. パネル討論 「ヨーロッパの言語政策と日本の少数言語再生」(16:20-17:00)
★ 各登壇者による当日の発表内容の報告書が本ページ末尾よりダウンロードできます。

予稿集・ポスター


事務局からの報告

 早春、まだ風の冷たい日でしたが、会場のセミナー室は超満員。「日本のことば」の現状と将来に対する関心の高さが示されていました。

阿部年晴先生と金子亨先生 冒頭、ことば村理事長の挨拶では「ことば村の目的は、ひとつにはことばに対する好奇心を満たすこと、もうひとつ、重要なのは、異なる母語を話す人々の間に豊かな環境を作り出したいということです。・・・異なる言語を母語とする人々が共生するための作法とセンスを作り出したい、そういう場、そういう拠点を作りたいというのがことば村の重要な目的です」と述べられ、学会や大学とは違う市民団体として、ことば村がこのシンポジウムを開く意義が表明されました。

 司会の金子亨先生(千葉大学・ことば村顧問)から、このシンポジウムは「多言語社会 日本」の第1回目で、「次からは在日外国人の言語・文化の問題、日本語方言の問題、さらに日本における外国語教育などについても2回目、3回目と開いていきます。今日の第1回目は、多言語社会ヨーロッパでどのように言語政策が行われてきたか、それを参考に、日本の言語の現状を考えていきます」と今回の目的が伝えられました。

 最初のパネリスト・山川智子氏は現代ヨーロッパの「多様性の中の統一」をめざす歴史的な流れの中で、主として文化・言語・人権に関する枠組みを作って、政策提言を行っている「欧州評議会」の取り組みについて発表。言語習得の物差しである「欧州共通参照枠(CEFR)」について詳しく説明。大戦を戦ったフランスとドイツが共通歴史教科書を編纂して授業に使うことが始まったことなど興味深いエピソードなども披露されました。

 続く佐野彩氏は、ヨーロッパの言語状況の具体例として、研究しているフランスの地域語・サヴォワ語がどのような現状か、また、現地での保持・復興の芽について報告。サヴォワ語話者の詩の朗読など、音声による紹介もあり、初めて聞くことばの響きを会場全体が聞き入りました。

中川裕先生 3番目に登壇の中川裕氏は、アイヌ語研究の第一人者。各所のアイヌ語教室で教えてもいらっしゃいます。アイヌ語を母語とする話者は現在どのくらいいるのか、少なくとも言語習得期にアイヌ語だけで生活していたひとはもういないだろう、しかしそれに対して悲観的になるのは「母語というものに対する信仰、それを絶対視する思考の産物です」しかし、今、日本語話者であるアイヌの人々の間でアイヌ語を学ぼうとする人が増加している、そこから「私が提唱したいのはカッコ付きの『母語』という概念です。つまり自分のアイデンティティーと結びつけ、自分のことばとして少しでも覚えたい、身につけて覚えたい、それに向かって行動している、そういうことばが『母語』だと考えます」そういう行動の中でも注目すべきなのが、アイヌ語弁論大会の発展や若いアイヌたちの音楽活動・芸能活動で、たとえばゲーム「ファイナルファンタジー13」に一部アイヌ語を使用した音楽が使われるなど、社会に向けてアイヌ文化やアイヌ語を発信している。そういう使う場を作ることが非常に重要だと話され、弁論大会のアイヌ語スピーチや、伝統的音楽の演奏バンドや現代的アレンジのバンドなどの音楽シーンがスクリーンと音響で紹介されました。「歴史的状況が違っていれば母語だったはずの『母語』の学習を、恒久的に継続できる体制を創ることが、少数言語政策のかなめだと訴えていきたいです」

 会場からは「アイヌ語教室の飲み会でアイヌ語を使っていますか」と質問。中川「講師は使います。中には普通のレストランでアイヌ語で注文する講師グループもいて、外国人だと思われて親切にされる」(笑)「100年以上使用できない期間があったのだから、それをもとに戻すにはそれ以上の時間がかかる。100年のスパンで復興計画を立てなさいと審議会などには提言していますが」

 4番目は宮古島のことばの文法を主に言語調査・研究を続けている下地理則氏。下地先生の調査対象は伊良部島のひとつ下地島で、その中でも地域によってことばが違うとのこと。日本諸語のひとつですが、伝説など話者の音声を聞くと、標準日本語とは全く違う響きです。話者は50代60代以上の高齢者で、その再活性化について住人の意識を調べたところ、多くの人が「このまま消えてなくなるのは残念だが、日常生活で使うのは現実的ではない、無形文化財として記録・保存することがいいのでは」という意見。若者は話せませんが、伊良部ことばの意味を説明すると非常に興味を持つことがあります。そこで「マスターして話すということではなく、挨拶や歌、ことわざ、民話、そのほか伊良部ことばトリビアというような知識、そういう伊良部ことばと緩やかな関係を保っていく状態を確保することが大切なのではと考えます」また教員や役所の職員の応募要件に伊良部語を入れるなど「インセンティブを作る、つまり伊良部語が使えると役に立つという場面を作ること」が再活性化に役立つのではないか。また、ことばを楽しむという取り組みも紹介されました。宮古ことばを混ぜたメールマガジンの紹介や、スクリーンでは、宮古TVの人気番組、伊良部ことばのおばあさんと標準日本語を話す英語ネイティブの聞き手の対話。このような活動が宮古のことばを緩やかに保持していくことに役立つということです。

 貴重な報告が続き、時間が迫ったために、残念ながらパネルディスカッションが実施できませんでした。熱心な参加者にも申し訳ないことでした。

阿部年晴先生と金子亨先生

以上 文責・事務局


登壇者からの報告書

 各登壇者による当日の発表内容の報告書です。タイトルをクリックすると、PDFファイルをダウンロードできます。

  1. 開会挨拶:ことば村理事長 阿部年晴「言語の多様性-人類の大切な遺産」
  2. 司会:金子 亨「ヨーロッパの経験と日本の少数言語政策」
  3. 報告1:山川智子「多言語社会ヨーロッパの言語政策」
  4. 報告2:佐野 彩「ヨーロッパの地域・少数言語の事例―フランスのサヴォワ語を中心に」
  5. 報告3:中川 裕「アイヌ語再活性化の現状」
  6. 報告4:下地理則「琉球語宮古方言の再活性化」