地球ことば村
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ことば村・ことばのサロンB

2006・7月のことばのサロン
▼ことばのサロンB
6月に引き続いて「在日外国人による『日本語のここが困る』」
●7月15日(土)午後2時―4時
●話題提供:アフガニスタン内の少数民族ハザラ人、日本に来て6年のAさん
●アフガニスタンの言語や文字、民族事情、日本での困った経験について

 こんにちは、と事務所に来てくれたAさんは、日本人と見分けがつかないような顔立ち。出身民族のハザラ人は、タリバンの遺跡破壊で有名になったバーミヤンやマザリシャリフなど、アフガニスタン中央部に住む人口6万人くらいの少数民族です。モンゴルのユーラシア制覇の時代に、アフガニスタンに残留した民族ではないか、という説があるそうです。

 最大民族のパシュトゥン人やタジク人などと顔立ちが違うこと、イスラム教の中でのシーア派を信仰していて、他の民族はスンニ派であることから、タリバン時代以前から迫害を受け、職業も決められていたのだそうです。バーミヤンの大仏は、もともとハザラの顔をしていたので、タリバン以前に顔の部分だけ壊されてしまっていました。

タリバン時代に、ハザラ人迫害はますますひどくなり、ハザラの男性は連行され、たいていは殺されるという事態になったため、多くのひとが国外に難民として逃れ、Aさんはそのひとりとして日本に逃れてきたのです。

日本に来て一番困ったことは、道に迷っていても、だれも助けてくれないこと。だれかに聞きたくても、日本語で話しかけているのに、びっくりしたように逃げていく経験が重なったので、今は「もう聞くのはやめました。迷ってもいいから、自分でさがすことにしした」また、2年以上も住んでいたアパートで、隣のひととも上階のひととも、一度もことばを交わすことがなかった。これも驚きだったそうです。

「アフガニスタンでは、外国人が困っている様子だったら、自分から近づいていって、声をかけて助けます。日本では、例えば新幹線で5時間となりの席にすわったひととも一言もはなさない。どうしてなんでしょう?」出席者も考え込みました。ある出席者は「私たちは必要以上に警戒心が強いのかしら?」また、「ことばをかける、ということ自体がうっとうしい、と感じるようになっているのか・・・?」「だんだん物騒な世の中になってきているからか」などなど。

Aさんはアフガニスタンでは文字を美しく書くカリグラファーとして暮していました。私たちのためにいくつか、ボードに書いてくれた文字はとても優雅。しかし、ひとつの文字でいくつもの発音があるので、学校で習わないと、アフガニスタン人でも文字を書くのは難しいことだそうです。

Aさんの母語はハザラ語。パシュトゥン人、タジク人はダリ語を話し、それが公用語になっています。この2つの言語はよく似てはいますが、ダリ語が多く聞かれる状態なので、ハザラ語話者はダリ語もわかる、しかしダリ語話者はハザラ語がわからない、という状況。インド映画などを通じてウルドゥー語もかなり通じるそうで、アフガニスタンの多言語状況が垣間見えました。

日本で難民として認証される難しさや、アフガニスタン現政権になってからの情勢など、マスコミには報道されないような話も語られました。これまで、「タリバン政権 VS アメリカ軍 その戦火で被害をうける民衆」 という構図で見えていた当時のアフガニスタンのなかに、さらに民族浄化のモメントがあったことを知り、現在でもそれが引きずられていることの重さを感じたサロンでした。