地球ことば村
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【地球ことば村・世界言語博物館】

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ことば村・ことばのサロン

2006・12月のことばのサロン
▼ことばのサロン
「インド・ヒジュラの人々とその言語」
●12月16日(土)午後2時―4時
●慶應義塾大学三田校舎131-E教室
●話題提供:國弘暁子(神奈川大学・ポストドクター研究員・文化人類学)

インドに住むヒジュラと呼ばれる人々は、男女両性具有者、あるいは去勢された男性たちで、カーストに属さず、女装して独特の暮らしを送っています。非公式データによれば、インド全土に5万人のヒジュラが数えられるとか。

國弘さんは研究活動の当初から、ジェンダーの問題に関心を持ち、さらに通常のジェンダー研究の枠組みからはずれる現象として、インドのヒジュラに興味を持って調査を開始。

インド北西部グジャラート州の商業中心地アーメダバードをフィールドに、ヒジュラの人々と共に暮した貴重な調査経験から、興味深いお話が聞けました。

ヒジュラの毎日

 グルと呼ばれる師匠格のヒジュラを中心に、何人かの弟子が一家を形成。女神のお使いとして、寺院で人々に女神の祝福を与えたり、子どもが生まれた家に行って、女神の加護を祈ったりしながら、施しを求め、それが拒まれると、相手にことばや身振りで呪いをかけることも。また、売春で稼ぐことも多く、一般のひとびとからは、尊敬と軽蔑の対象とされています。

 ヒジュラ自身も、卑語や隠語を多用して、仲間との共同世界を作っています。例えば「タリ・マ・ニ・ボッシュ!」は英語で「Fuck your mother!」とほぼ同じ。一般のひとは決してこういうことは言わないそうです。

ヒジュラになる

 ヒジュラになることをグジャラート語では「女神の召令がくだる」あるいは「ガガロ(スカート)をはく」と言います。國弘さんの聞き取りでは―

ヒジュラA氏「自分は13歳の時にガガロをはいた。・・・父親は自分を殺すと言っていた。それはこのような格好のせいだ。父親がブラウスとガガロを脱がせたので、自分は(呪いの)手たたきをした。それで父親は『女神の召令が下った』と言った。・・・・」

 志願者はガンジス川の沐浴から始まる去勢儀礼を経て、ヒジュラになると、サリーをまとい、グルの家で集団生活を送ります。彼らは独特の耳飾りなどで、ヒジュラであることをアピールしています。

 過酷な去勢儀礼を受け入れてヒジュラになることを選び、見えない境界線で人々と区切られる生活を送る―あえてその選択をするひとびとの思いはなかなか理解することがむずかしいですが、人間存在の深淵を垣間見たように思いました。また、ヒジュラが仲立ちをする「女神」信仰は、日本の民間信仰(お宮参りなど)に近いもので、ヒンドゥー、ムスリムの信仰と両立しているというのも、興味深いことです。

 國弘さんが撮影したヒジュラの人々の画像、採集した彼ら(彼女ら?)の歌など、なかなか接することがないような貴重な資料にふれて、参加者の質問も活発に、充実したサロンとなりました。