地球ことば村
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ことば村・ことばのサロン

2007・3月のことばのサロン
▼ことばのサロン
● 「古代日本語を読み解く」
● 3月17日(土)午後2時―4時30分
● 話題提供:小林昭美氏(日本語研究家)
● 古事記・日本書紀から万葉集などの日本語にある中国語・韓国語渡来のことばを読み解く。

小林さんはNHKテレビの教育番組プロデューサーを退職後、以前から関心のあった、文字研究から、古代日本語の世界に踏み込み、中国音韻学と西欧言語学の両方をにらみながら、記紀や万葉集のことばを研究していらっしゃいます。

小林さんのお話に先立って、千葉大学の金子亨先生から、小林さんの講演が位置づけられる場所として、「日本語の系統」について説明がありました。

それによると―

日本語は「西南日本語」「本州東北部日本語」「西オホーツク語」「中国東北部古代ツングース語」「朝鮮半島プヨ・ハン語」の数珠がからまったり、切れたりする変遷を繰り返しながら、形成されていったようです。しかしそれらの親の言語は今のところ不明。いわば孤児の言語として、19世紀の西洋歴史比較言語学の導入以来、今日でも日本語のルーツは解明されていません。そうした日本語研究状況を予備知識として、小林さんのお話が始まりました。

* 日本はなぜ「ジャパン」なのか。

隋・唐の音韻を「韻鏡」などの資料で研究すると、古代中国語の音がわかる。それを当てはめると古代中国語では「日本」は「njiet pu_n」だが、マルコ・ポーロが来た元の時代には「djiet pu_n」となっていたはず。ジャパンよりむしろヂャパンにちかい。マルコ・ポーロはそれを(聞き間違えたのではなく)ジパングと聞き取った。「ジパング」はむしろ、元の時代の中国音を正確に伝えていることになる。

* 古代日本の天皇のおくり名は日本語か。

古代の天皇には「ワケ」「ワカ」という称号をもった天皇が多い。
応神天皇:ホムタワケ 雄略天皇:オホハツセノワカタケ などなど。
この「ワケ」は分家のことではないか、とか、「ワカ」は若いということではないかといわれているが、中国語の「王」に対応することばである可能性がある。

古代中国語の「王」は「hiuang」と発音されていたが、音韻変化法則にしたがって、時代とともに頭韻「h-」が失われ、語尾の「-ng」が「-k」に置き換わったとすると、

「iuak」となり、「ワケ」に近い発音となる。

* 日本語・中国語・朝鮮語対訳「万葉集」

有名な万葉集の歌に
「渡津海の 豊旗雲に 入日さし 今夜の月夜 清明けくこそ」
がある。古代中国語と朝鮮語の音韻から読み解くと、この名歌のほとんどの語は、中国・朝鮮渡来の語であることがわかる。

たとえば、第一句の「わたつみの」は朝鮮語の「海(pada)」+つ(古代日本語助詞『の』)+み(日本語の『海』)

このように見ていくと、次のように分析できる。
朝鮮語:わた(海)はた(海)ひ(日)
中国語:海 雲 入 射 今夜(こよひ)
日本語:豊 月 つ の とよ に

このように、古代日本語にはきわめて多くの中国語・朝鮮語からの借用語がある。しかし、日本語学者はあまりそのことに注意を払わず、古代中国語・朝鮮語をきちんと研究対象にしない傾向がある。しかし、私は、古代中国語と朝鮮語にさかのぼることによって、古代の日本語が解明される可能性はきわめて大きいと考える。

音韻がどのように法則的に変化してきたのか、それがわかると、記紀・万葉の読み方がぐんと違ってくることがわかりました。古代日本の風景だけでなく、古代中国大陸、朝鮮半島の風景も歌のイメージとして広がって、古代人の交流のスケールの大きさに驚きます。古代の音をどのように決定するのか、なぜ日本語の系統づけがむずかしいのか、参加者から質問が相次ぎ、充実したサロンになりました。

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