地球ことば村
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【地球ことば村・世界言語博物館】

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ことば村・ことばのサロン

2007・4月のことばのサロン
▼ことばのサロン
● 「マダガスカルの言語と生活文化」
● 4月21日(土)午後2時―4時30分
● 慶應義塾大学三田校舎514教室
● 話題提供:森山工先生(文化人類学・東京大学准教授)

 世界第4の大きさの島、アフリカ大陸の沖合い400キロのマダガスカル島は、8000万年前にインドやスリランカと陸続きだったレムリア大陸から分離して、現在の形になったといわれています。言語や文化はアフリカ系ではなく、遠く離れた東南アジア島嶼部などと同じオーストロネシア系。島の中央東北部・シハナカ人の住むアウラチャ湖地方を1988年以来フィールドとする森山先生を迎えて、まずたくさんの現地写真を見せていただきました。

6000キロの旅路

11月から5月の雨期には、水田で稲作が行われています。黒牛にくびきをかけて田起こしし、日本とおなじように、苗を植える光景や、できた稲を結んで初穂の感謝をささげる儀礼など、なつかしいような風景がひろがりました。水田や焼畑における稲作だけでなく、2本のシリンダーで風をおくって鉄を打つフイゴなどにも、東南アジア島嶼部との文化的なつながりがみられるそうです。6000キロも離れた東南アジア島嶼部の人々が、どのようなコースでマダガスカルにたどりついたかは、考古学的にもまだ証明はされていないということです。船に乗ってインド洋を直線距離で来たのか、インド洋の沿岸伝いにやってきたのか。いずれにしても壮大なドラマです。

マダガスカル語の特徴

 マダガスカル語もカリマンタン島南部の言語と同じバリト諸語に分類され、方言差はあるものの、全島で話されています。日本人から見た特徴として、複数の一人称(私たち)が、「あなた(あなたたち)」を含むか、含まないかによって違う語になることや、能動態と受動態のほかに関係態というかたちがあり、これらを命令法で用いると、ある状況を招来させることに関する話者の祈念や意志を表現する言い回しになることなどが、挙げられました。なかなか日本語には訳しにくい表現です。このような表現を必要とするマダガスカル人の内面世界はどんなものなのか、興味をおぼえました。

訪問した時の挨拶は、「Manahoana? マナウアナ?=お元気ですか?」とか「Inona no vaovao イヌナ ヌ ヴァオヴァオ=何が新しいですか?(何か変わりがありますか?)」 ですが、後者の挨拶については、かならず主人が先に聞き、訪問者が答えてから、つぎに訪問者の側から主人に聞く、という順序を踏まないと失礼にあたるそうです。「挨拶とは、適切な場、適切な時に適切な人が発するもので、高度に形式化されたものと言えます。これを学ぶことで、生活に根ざしたことばの学習ができます」と森山先生。なるほど、と思いました。少なくともフォーマルな場面での挨拶は、世界中こうした形を持っているのではないか。日本でも葬儀や結婚の挨拶などは、決められたしぐさや一座でだれが最初にいうか、など暗黙のうちに了解されているものです。

 ことば村会員でニューカレドニアの言語を専門とする言語学者・大角翠先生も参加され、遠くはなれたふたつの地域の言語の共通性がいろいろと示されました。一回のサロンではもったいない内容、ぜひこれに続く機会があればと思いつつ散会しました。