地球ことば村
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【地球ことば村・世界言語博物館】

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ことば村・ことばのサロン

2016・3月のことばのサロン
▼ことばのサロン

 

「文化雑談―ヤシ殻の椀を出ろ!反「知の細分化」への招待」


● 2016年3月12日(土)午後2時-4時30分
● 慶應義塾大学三田キャンパス南校舎442教室
● 話題提供:前川健一先生(紀行作家・立教大学観光学部兼任講師)


前川健一先生  前川先生は建設作業員、清掃作業員、料理人などとして働きながら世界をめぐり、その体験を多くの本に著わされ、JTB紀行文学大賞・奨励賞など受賞。対象が緻密に描写された紀行文は余人にはない迫力で読者のイメージをかき立てます。
 講演のはじめに―、今の学問は専門が細分化され、専門以外のことは全く知らないという輩が増えている。しかし、知識にはのりしろが必要。そののりしろにさまざまな事象や事実がひっかかって、知りたい対象がどんどん豊かな様相をみせてくれるのだ。そののりしろを広げるのが「雑談」である。さまざまな分野の研究者との雑談の中で、最新の知識が得られる。その立場で、手始めに立教大学観光学部での授業から今日の「雑談」が始まりました。

 前川先生の授業はトラベルジャーナリズム論。しかし、最初に学生に求めるのは、日本語を勉強すること。(レポートの日本語が体をなさない学生がいる)次に言葉について。複数の言語を自在にあやつる地域・国があることを理解していない学生が多い。世界といっても、イメージされているのは日本とイギリス、フランス、アメリカであって、ヨーロッパでもスペイン・ポルトガルは念頭にない。ましてアフリカやアジアは勘定に入らない。これは研究者や作家などでも同じこと。フィリピンで日本から来た、と言ったら、日本語はできるか?と尋ねられた。むこうからすれば当たり前の質問だが、一般的な日本人は驚く質問だろう。東ティモール独立に際して、公用語を何にするかが検討された。民族語はテトゥン語だが、文字化されていないので教科書を作ることがむずかしい。独立以前の教育言語はインドネシア語だったが、自分たちを弾圧してきたインドネシアの言葉はいやだ、と。そこで国語はテトゥン語、公用語は英語とテトゥン語、実用言語はインドネシア語ということになった、これが多くの国にも共通する現実。

会場の様子

 前川先生は1990年代にバンコクで定点観測者として『バンコクの好奇心』を著わされていますが、アジアでもアフリカでも旅と食文化をテーマに観察を続けてこられました。梅原猛は学者とは「研究者・教育者の側面と、文化の翻訳者の側面がある」と語ったそうですが、文化の翻訳者とは、文化についてやさしく言語化して一般に伝えるということ。前川先生によれば、歴史も政治も芸術もすべて食文化にからんでいる。その切り口でたくさんの文献を渉猟し、さまざまな研究者と雑談すると、その研究者から思わぬ人脈が広がったり、新しい資料が得られたりする、それが「雑談」の効用の神髄だ、とのこと。

 2時間半の講演・質疑応答の中で、話題はあちらにとび、こちらへ帰り、とあっというまに終わりの時間になりました。参加者それぞれの関心事と、今日のお話とがどこかで共鳴し、新しい世界が開けることと思います。
 講演の全容はYouTubeでお楽しみください。

YouTube映像
 https://youtu.be/FCh6iSXLJaw(別ウィンドウが開きます)


(文責:事務局)