地球ことば村
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日本語のなかの沖縄方言

日本列島の南に連なる島々の方言を日本言語学では「琉球方言」と呼んで、 「本土方言」と二つに区別しています。琉球方言は、方言ではなく姉妹語と言っ てもいいくらい、性格の異なることばです。

琉球方言には、奄美、沖縄、宮古、八重山、与那国の5つの方言があり、これ らはさらに島ごとに細かく分かれています。それぞれの方言は自立していて、 隣の島でもお互いにことばが通じなかったり、コミュニケーションが取り難い ことがあります。

日本語の「ハヒフヘホ」は江戸時代以降現在のように発音されるようになりま したが、奈良時代には「パピプペポ」、室町の頃には「ファフィフフェフォ」 のように発音されていたことが分かっています。つまり、鼻(ハナ)は、1000 年くらいかかって、パナ→ファナ→ハナと変化してきたことになります。とこ ろが沖縄方言では、現在でも北部ではパナ、中部ではファナ、南部ではハナと 発音しているのです。つまり日本語が1000年かけて変化してきた、すべての音 が残っていることになります。さらに久高島などで はパナとファナの中間の音(これは摩擦的軟化音と言います)で発音され、パ ナともファナとも聞こえます。沖縄の首里方言にも、サ行とタ行のあいだの音 (英語のthのような音、側面的摩擦音)があり、鳥(トリ)は一般の沖縄方言 では「トゥイ」と発音されるのですが、首里方言では「スイ」と発音されます。

このように音韻の例を見ただけでも、いわゆる日本語(本土方言)と琉球方言 とは異なることばだということが分かります。さらにアクセントや語彙、文法 がどのように変化してきたかなどを考え合わせると、東京の人(本土方言)と 沖縄の人(琉球方言)がナマで会話しても通じないのは当然です。同じ琉球方 言を話す人たちの間でさえ、通じないことが多いのですから。

しかし、5つの琉球方言を語源的にさかのぼっていくと、これらは一つの纏め ることができるのです。そしてその元のことばは、日本語の古い姿とも非常に 近いものです。つまり琉球方言は、もともとの日本語から、昔に分かれたこと ばなのです。

《外間守善:言語学(2005年掲載)》