地球ことば村
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沖縄の結婚披露宴


 一昨年のことになるが、沖縄で結婚式・披露宴に出席することがあった。 沖縄出身の人と結婚する友人が式を挙げたのである。沖縄でもこのごろ、伝統的な結婚式・披露宴を行うカップルは 減ってきているのだという。友人のときも伝統的なものではなかったが、東京とは一味も二味もちがうものだった。

チャペルでの結婚式 11月上旬とはいえ、沖縄は 東京の真夏のような日差しだった。結婚式は、本島中部・読谷村の残波岬にある真っ白なチャペルで、キリスト教式で 執り行われた。祭壇の向こうはガラス張りになっていて、そこから見えるブルーの海の美しかったこと!

 夕方になると、那覇のリゾートホテルで披露宴が開かれた。
 会場に入るとステージがあった。沖縄の結婚式はとても華やか(派手)だといつか本で読んだことがある。 友人5人で祝辞と歌の余興をすることになっていたが、どうやらステージの上でやらなければいけないようだった。 「え?!余興はステージの上でやるの?!」と戸惑う私たちだったが、余興好きで、しかもかなりレベルが高いと 言われる沖縄の人たちにとって、ステージの上で余興を披露するのは当たり前のことのようだった。
 出席者は100人以上だろうか。沖縄では披露宴にかなりの数の人を招待するようで、兄弟の職場の人まで呼ばれたり するそうだ。招待状には出欠の返事をしないのだが、それも、あまりに人数が多いので、あらかじめ来られると 分かっている人にだけ招待状を送っているのだという。会場でも指定されるのはテーブルだけで、そのテーブルの どの席に座るかは自由だった。
 親類が末席に座る東京の披露宴とは異なり、新郎新婦の目の前の席には家族や親戚が座っている。 家族や親戚の存在の大きさは、披露宴をとおして感じられた。

披露宴のステージ そしていよいよ披露宴が地元のアナウンサーの司会で始まった。
 祝辞に続いて、親戚や友人、職場の同僚による余興が始まる。余興は途切れることなく続き、その合間にウェディング ケーキのカットやキャンドル・サービスが行われた。
 とりわけ印象的だったのが踊りだ。親戚の女性たちを中心に、沖縄の舞、特に結婚式のときに踊られる舞などが、 入れかわり立ちかわりいくつも踊られた。大人数で踊る舞だけではなく、二人だけで踊るものもあり、これは親戚に プロの踊り手がいなければ見られないものだということを後から聞いた。ゆったりとした三線の音楽にのった、穏やかさ のなかに、心地よい緊張感が感じられる舞だった。
 親戚の女性たちがみな踊れるのには驚いた。沖縄に生まれて育てば、あるいは沖縄に暮らせば、自然とあのように 踊れるようになるのだろうか?
 「ここは踊りの国。四季を通じての、数々の祭りの芸能はもちろん、結婚、誕生、還暦や古稀の祝、新築、旅だちの ときなど、あらゆる機会に踊りがある。」(岡本太郎『沖縄文化論―忘れられた日本』中公文庫、1996年、p.123)
 余興を見ながら、料理とお酒も楽しむ。料理はテーブルごとに取り分ける形式だ。何より沖縄らしかったのはお酒。 ビールとワインではなく、ビールと沖縄のお酒“泡盛”だった。
 宴がクライマックスを迎えると、全員がステージに上がって踊る。手を額の上でひらひらさせて踊る沖縄の踊りだ。 みな思い思いに踊る。
 「歓喜が全身をつき動かす。人は踊る。よろこびの極みが踊りであり、そのエネルギーの放出はまた強烈な歓喜 である。」(同上書、p.120)

引き出物の鯛かまぼこ 空路家に帰ってから、 引き出物を開けた。中に入っていたのは、なんと全長30センチほどの大きな鯛の形をしたかまぼこ!初めてだ。 インターネットで調べてみると、富山のあたりでも同じような習慣があるそうだ。沖縄と関係があるのかどうか…?
 沖縄での結婚式は、伝統的な形とはちがっていても、脈々と流れる伝統や文化が感じられるものだった。沖縄だけで なく、日本のほかの地域にも、失われつつあるのかもしれないが、土地に根づいた伝統的な文化があるだろう。友人夫妻 の末永い幸せを祈るとともに、このように多様で豊かな地域の文化が時代とともに形を変えつつも、引き継がれていく ことを願う。

(A.S.)