地球ことば村
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【地球ことば村・世界言語博物館】

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「言語ヒッチハイクガイド」


松岡亜湖 小学校教諭・名古屋市在住

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 初夏の風に若葉が揺れる季節となったかと思ったら、あっという間に日差しは夏の強さになりました。皆様如何お過ごしでしょうか。春から新しい環境で過ごしている方も多いことと思います。良いご縁に恵まれて新たな地平が開かれることを心からお祈り申し上げます。

 前回から随分間が空いてしまいましたが、4月・5月は教員の繁忙期(変な天気で運動会が出来るかヤキモキした方もみえるかと。。。)であると同時に、NGOやNPOの繁忙期でもあります。
 一つは、総会の準備。ことば村も6月に実施でしたね。今年は総会には行けなかったんですけど、7月8日に田中真知さんが名古屋にいらっしゃるので、ウキウキしております。わーい♪ http://magoso.jp/event/2017summer

 NPO界隈のもう一つの繁忙期といえば、アースデーやフェアトレード月間です。私が暮らす名古屋市は、平成27年にフェアトレードタウンとして認証を受けました。 http://www.alterna.co.jp/16293 元々4月から5月には様々なフェアトレードイベントが行われておりましたが、タウン認証を受けて更に盛り上がっています。今年は、4月30日の、垂井のフェアトレード・デーイベントにブース出店で参加、フィリピン・バギオのTALA(第四回でご紹介したゲストハウス)つながりの方にお会いしてびっくり!しました。青い空に山の緑、地産地消の美味しいご飯、気持ちの良い1日でした。「農家のお弁当」は、何と10時半には売り切れという人気ぶり。地域の皆さんにとっても楽しみなイベントとして定着しているのですね。


五月晴れの会場風景(左)/美味しかった〜!ガパオライス(タイ飯です)(右)


フェアトレード・ファッションショー

 言語の保全というと、「難しいことは分からない」と身構える人も多いのですが、地域の言葉を大切にする活動の原点は、自分の暮らしと相手の暮らしを大切にすることであり、日々の営みの中で多様な人や言葉が行き交う場作りが大切です。5月13日には、名古屋市でも、フェアトレード・デーなごや2017コーヒー・サミット&アール・ブリュットのイベントが行われました。


みんなでやろみゃーフェアトレード‼(左)/コメダ珈琲店もフェアトレードに賛同(右)


「FTT名古屋」のシンボルマーク決定

 さて、なふたうん http://huzu.jp/naftown/ を筆頭に、フェアトレード・タウン認証を目指して長らく活動を続けていた名古屋では、2月には「もう一つのチョコレート展」というイベントが行われます。チョコレートの原料であるカカオの生産には、単一栽培や児童労働・仲介業者による買い叩きの問題が絡みます。「もう一つのチョコレート展」は、バレンタインデーを機に、自分たちと働く人と双方が笑顔になれるチョコレートを、という取り組みです。個人的なお勧めは、牛のイラストでおなじみのピープルツリーのチョコレート。乳化剤を使わず、温度の影響で溶けやすいココアバターを贅沢に使っているため秋冬限定販売だそうです。ベジタリアン対応チョコのあっさりした味わいも魅力的ですが、私はミルクやプラリネが大好きです。下の右側はピープルツリーのチョコレートの生産者団体「エル・セイボ」のカカオの収穫風景。ボリビアの小規模農家の組合で、奨学金支援なども行います。 https://www.youtube.com/watch?v=X8aj36t9VH8 スペイン語かな?字幕もありますが、分かる方は是非、聞き取りに挑戦してみてください♫




©Miki Alcalde
(写真提供:ピープルツリー http://www.peopletree.co.jp/

 チョコレート展は、毎年、中部にて毎月54万部発行の環境情報誌・リサでご紹介頂いてます。 http://risa-eco.jp/anotherchoco/ 因みに5月はフェアトレード特集でこちらにもピープルツリーが登場しています。 http://www.media-brain.co.jp/images/book/risa2017_05.pdf

 今回は、フェアトレードのご縁で体験したことと、高校生からお寄せ頂いた記事をお送りします。一つは、白鳥庭園のハニカム王子VSハニーガールズ対決で初めてお会いし、チョコレート展で素敵なツアーを企画してくださった愛知商業高校ユネスコクラブの皆さんから頂いた記事。もう一つは、カリンガ族の泥絵絵本に携わったコルディリレラ・グリーン・ネットワークのゲストハウス・TALAからジープニーで20分位の場所に工房を構えるEDAYAでの楽器製作です。EDAYAにお邪魔してあっという間に一年が過ぎ、代表の山下さんは本を出されました。バギオの澄んだ空気、エドガーさんの魔法のような竹細工の手捌き、山下さんのはにかんだ笑顔、今でも、ほんの少し前のことのように思い出されます。 https://edayabook.official.ec/items/6187346


8.地域残しと文化の伝承を目指して発信する&フィリピンの多言語状況② 〜バギオの工房から、名古屋の高校から〜


 初詣は大混雑する熱田神宮。。。は、皆さん、ご存知のことと思います。この熱田の森を抜けて徒歩15分位の場所にある「白鳥庭園」は、ご存知でしょうか?「徳川園」と並ぶ名古屋市自慢のお庭です。

 この二大庭園、実は、庭の見事さを競い合っているだけではありません。「徳川はちみつ」と「あつた白鳥はちみつ」が美味しさを競い合っているのです。私は昨年(2016年)秋にFTNN(NPO法人フェアトレード名古屋ネットワーク)の集まりで初めて知ったのですが、毎年市民参加で味の良さを競うはちみつ対決が行われ、白鳥からは名古屋学院大学生のハニカム王子、徳川からは高校生のハニーガールズの熱いプレゼンが繰り広げられます。今回の寄稿はハニーガールズ@高校生なので、大学生勝利の記事もご紹介しておきます。 http://www.ngu.jp/system/andn/project/detail/3812
 今年は夏の対決になるそうです。どちらが勝利を収めるのでしょう? https://www.tokugawaen.aichi.jp/01_event/event_report/2016/0716/index.html

 なお、昨年のハチミツ対決については、FTNN(NPO法人フェアトレード名古屋ネットワーク http://www.ftnn.net)発行の「惣」でもご紹介しました。今回は、チョコレート展参加をはじめ、様々な素敵な取り組みを行なっている愛知商業高校ユネスコクラブの「文化美人へのみちを歩こうツアー」の取り組みを中心にご紹介します。チョコ展&寄稿にご協力くださったユネスコクラブの皆さん、新井美幸さん、ありがとうございました!


ユネスコクラブ活動紹介

愛知商業高校ユネスコクラブ

 私たちは、2011年より「なごや文化のみち ミツバチプロジェクト」を立ち上げ、校舎の屋上で都市型養蜂の実証実験を行っています。屋上で採れたはちみつは、尾張徳川家とかかわりが深いことから「徳川はちみつ」と名づけ地域のブランド化を目指し、商標登録をしています。活動の一つとして、「ガーナ産フェアトレードカカオ」と屋上で採れた「徳川はちみつ」を使用した「幸せのはちみつカカオ」を商品開発しました。このアイスの購入代金の一部はフェアトレードプレミアムに充てられており、ガーナの教育支援や農業発展のために役立てられています。

 2017年1月21日、名古屋市東区「文化のみち」を舞台に、株式会社JTB中部様と共同で「文化美人へのみちを歩こうツアー第4弾 文化のみちを巡る自分磨きの旅」を開催しました。過去3回文化美人へのみちを歩こうツアーを実施しています。今回は“エシカル”をテーマにツアーを開催しました。エシカルとは直訳すると「倫理的な」という意味になっており、「おもてなし、おもいやり、おかげさま」という自分にも環境にも優しい暮らし方のことを言います。

 文化美人へのみちツアーの行程では、普段行うことのできない特別な体験を通してエシカルを体感してほしいと考え、kitchen POIPOIにて、朝採れの無農薬野菜を使用したオーガニックランチ、橦木館にて、校舎屋上で採れたみつろうを使用したナチュラルハンドクリーム作り、禅隆寺にて、ハート型のお茶碗を使用し、楽しみながら行う茶道をコンセプトにした和やか茶会を体験していただきました。

 お茶会ではフェアトレードのチョコレートを使用した和菓子をツアー限定で制作し、私たちのツアーならではの特別感も体験していただきました。行程ではそれぞれ「無農薬」「伝統継承」のエシカルの要素を取り入れています。当日は私たちが添乗員としてお客様をおもてなしさせていただきました。

 また、私たちが開発した地域通貨「はにかむコイン」の実用化を目指し、モニターツアーとしてツアー内でも使用していただきました。はにかむコインを入れる巾着には、使わなくなった布を再利用する「アップサイクル」の考え方を取り入れています。

 今まで訪れる機会のなかった施設を訪れることで、文化のみちの魅力を知っていただくきっかけ作りができたと考えています。このツアーを通し、今まで“エシカル”について知らなかったお客様にも考え方について知っていただく機会を作ることができました。また茶道では他の人を「思いやり」「おもてなし」をすることもエシカルにつながっているということを知っていただくきっかけ作りをすることができました。



 参加していただいたお客様からも「エシカルについて理解することができた」というお言葉をいただくことができ、今回のツアーを実施したことで「エシカル」という言葉の認知度向上につなげるきっかけを作ることができたと思います。今後も継続的にツアーを実施することで、文化のみちの魅力を発信するとともに“エシカル”という考え方について浸透させられるよう活動を進めていきます。

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 文化の道・橦木館はこちら。 http://www.shumokukan.city.nagoya.jp/index.html
 名古屋市のフェアトレード発信拠点・風“s(正文館書店内)とフェア・ビーンズの美味しいコーヒーを味わえる橦木館カフェにもお立ち寄り頂けます。



 さて、次は、エシカル美人をもうお一方。山下彩香さんです。 https://p.blayn.jp/bm/p/bn/htmlpreview.php?i=crayonhouse&no=all&m=2472&h=true
 実は、この記事のためにEDAYAの由来を調べ直すまで、団体名の由来はEDgarさんとAYAkaさんだと思っていましたら、カリンガの言葉で精霊・spritの意味があったとは。名前の絶妙さといい、運命的な巡り合わせってあるんですね。

 このEDAYAの工房で、2016年3月に、竹楽器製作体験をして、伝統楽器や伝統文化についてお話を伺ってきました。当初は、ゲストハウス・TALAの運営にも関わるコルディリエラ・グリーン・ネットワークの楽器作りを希望していたのですが、短期の訪問だったためタイミングが合わず、反町さんがエダヤをご紹介下さいました。その節はお世話になりました!TALAのWebページはこちら → https://www.tala-guesthouse.org、EDAYAのWebページは現在リニューアル中だそうでして、ご本のリンクを紹介します。
こちら → https://edayabook.official.ec/

 エダヤは、フィリピン・北ルソンの先住民族の文化に着想を得たエシカル・ジュエリーブランドです。エダヤの職人であり、ご自身が先住民族・カリンガ族であるエドガーさんは、竹細工の達人であると同時に楽器演奏の達人でもあります。鼻笛は何と、呼吸の調整で5種類の音が出るとか(現地で実演して頂きました)。私は1つの音も出せず。とほほ。。。因みにこの鼻笛、戦闘の直前に心を落ち着けるために吹くそうです。

 お客を歓迎するために演奏するのはパトゥンクック(Padung Kog)。音に長短を付けて、吹きながら歩きます。竹を叩いて音を出す楽器は村によって名前が違い、Pinotlak Balingbing Falingbing Galgallangsaなどの名称があります。

 体験で製作した楽器はこちら http://edgarbanasan.strikingly.com/#gallery_3-5 のごく簡単なものです。エドガーさん個人のWebページは英語のみですが、見事な竹細工の数々の写真が満載ですので、ぜひご覧ください。惚れ惚れします。→ http://edgarbanasan.strikingly.com

 バギオはアクセスが良いので、訪問しやすいです。楽器は生で触れて、演奏して、なんぼ。演奏家で伝統芸の職人でもある方に話を聴くよい機会です。因みにセブはギターで有名。 http://www.excitecebu.com/2014/11/guitar-mactan−factory/ フィリピン発着の航空券はお値ごろLCCも増えてますし、アートにご興味がある方は、ぜひ行ってみてください。TALAにもEDAYAにも体験プログラムがあります。そこかしこの笑顔や歌声が、耳に飛び込む陽気なタガログ語や訪問先の少数民族の言語のお喋りが、困っている旅人には片言の英語や日本語で積極駅に声をかけ助けてくれるフィリピノ・ホスピタリティが、旅の楽しみを倍増してくれ、多言語や多文化で生き生きする社会を実感できます。

 フィリピンにせよ名古屋にせよ、観光地としての評価が高いとは言えない場所。それでも、入ってみれば魅力があるものです。ヴァーチャル・ツアーが可能な現代だからこそ、現場に入らなくては見えない土地の暮らしと言葉が醸し出す生の魅力に触れるべく、旅に出ること・足を運ぶことをお勧めしたいなと思います。

【2017年7月27日掲載】


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