地球ことば村
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【地球ことば村・世界言語博物館】

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ソルブ語


ソルブ語ということばがある。ドイツとポーランドとの国境地帯の二箇所に住んでいるスラブ系の人たちの民族語である。この人たちは、1500年ほど前にゲルマン人が西に移住した頃に東からやってきたスラブ人の生き残りで、中世以降ドイツ人が東方植民を始めて以来、バウツェン(ソルブ名:フディシン)とコトブス(ソルブ名:ホシェブス)地域のスラブ人たちがドイツ人に囲まれて民族と言語の島を作ってしまった。

バウツェン辺りで話されてきたのが上ソルブ方言、コトブス付近のことばが下ソルブ方言と言われる。「上、下」というのはこの辺りの河が北に流れるからで、下が北のブランデンブルグ、上が南のザクセンの方である。ドイツ人を含めて余所者にはこの区別はなかなか聞き取れない。日本人で聞き分けられるのは一人、三谷恵子さんくらいである。

長い間ドイツ人に公私ともに支配されて、ソルブ人は公的な場で母語を使うことはできなかった。ヒットラーの時代には話すだけで命が危なかった。かろうじて政治的の同権を得たのは第2次世界大戦の後だった。両方言地域共に東ドイツ地域にあるので、20世紀後半はドイツ民主共和国と称する国家の支配下に置かれたが、この国は公的には民族差別をしなかった。事実、両地域に二言語使用を奨励し、ソルブ学校を建て、実に立派なソルブ博物館を作り、国立のソルブ語研究所を建てた。さらに名門ライプツィヒ大学の言語研究所にソルブ語科を置いた。ソルブ博物館を中心に民族文化を広め奨励することにも精をだし、地域色として宣伝してきた。そしてこれらの成果は、その国が潰れた後も、ドイツ連邦に継承されて今日にいたっている。

ソルブ語は古いスラブ語の名残を文法のいろいろなところにとどめている。しかし長い間の接触のために、ドイツ語からの干渉が大きい。干渉という言語現象を見る見本のような言語で、その分野の研究も多い。

現在ソルブ語話者の総人口は約2万人という。しかし下ソルブ語を話せる人は多く見積もって7000人、だいたい60歳以上である。ヨーロッパの「危機言語」である。しかしこの状況を変える努力も始まった。1998年には、ソルブ教職員連盟が中心となって「ソルブ語活性化計画」が作られて、二言語教育方式によるソルブ語復活運動が始められた。有利な社会的条件のもとでの試みである。何とか成功して欲しい。

旧東ドイツ地域は貧しいだけではない。褐炭の濫掘や土地の汚染を始めとして社会生活の基盤が破壊され、未だに回復ができていない。ソルブの若者の就職もドイツ人と厳しく競合する。母語の危機が意識されるためにはまず食えなければならない。ここもそうである。

しかしW杯でライプツィヒへ行ったら、バウツェンまで足を延ばして、丘の上に立つ美しいソルブ博物館を訪ねてほしい。