地球ことば村
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クロアチア語

クロアチア語は南スラヴ語の一つです。スラブ諸語の中でも一番南西にあって、アドリア海を隔ててイタリアの東海岸に面しています。この言語を国語するのが、ワールドカップ第二戦の相手、クロアチア共和国です。この国が旧ユーゴスラヴィア連邦から独立を宣言して九年に及ぶ悲惨なバリカン紛争が起こったことはまだ生々しい記憶です。首都の古都ザグレブには未だにその傷跡が残っています。しかしアドリア海の秘宝と言われる美しい町ドブロヴニクには観光客が戻ってきています。

 クロアチア語はかつてセルビア語とクロアチア語を一緒にしたセルビア・クロアチア語の一部とされていました。この二つの言語には方言と文語の伝統に関するわずかな差があるだけで、標準文章語としては同じ言語だと考えられていたからです。しかしセルビア・クロアチア語の枠内にあった方言差は現在のクロアチア語の内部にもみられます。例えば、かねてから「何」という疑問詞をシト・カイ・チャのどれを使うか、中舌母音がイェかエかイと発音するかが方言差の目安とされてきましたが、今でも首都ザグレブでは「何」はカイ、中舌母音のイェが聞かれます。この言語をよく知っている三谷恵子さんは、クロアチア語というのは「国境が言語の呼び名を変えてしまう典型的な例」と書いています(三谷恵子「クロアチア語」『世界のことば小事典』)。

 クロアチア語はラテン文字で書かれます。この書記法は19世紀からの慣習です。一方、セルビア人は伝統的にロシア語と同じようにキリル文字を使ってセルビア風にアレンジして使ってきました。文字の上では昔からこの二つの言語は別に見えたわけです。バルカン紛争後のクロアチア共和国では、ラテン文字の表記がむしろ一人歩きしてクロアチア語という独立の言語のシンボルになっているようです。

 クロアチアは第二次大戦中早くからナチスドイツに占領されて、その支配下におかれました。そのために旧ユーゴスラビアの中でも肩身の狭い思いをして、バルカン戦争にもその影を落としました。しかしクロアチアにはドイツに対する親近感があるのでしょうか、ドイツへ出稼ぎする人達も多く、そこに住み着いた家族はもう五世代目にもなります。一番若い世代にはクロアチア語を話せない子供もいます。しかし最近ではバルカン紛争の傷が癒えつつあるので、母国との交流も回復し始めたようにみえます。

かつて20万以上もいたクロアチア国内外の難民も次第に落ち着いてきたように思われます。問題はむしろかつて同じ連邦に属していた南スラヴの諸民族、隣国のボスニア・ヘルツェゴビナやスロベニアなどとの関係をどう新しく構築していくかにあります。それをクロアチアの若い人達に期待したいと思います。