地球ことば村
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【地球ことば村・世界言語博物館】

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モン語(モン・クメール語派<オストロアジア語族)

 モン語は、クメール語とともに、古い文明語である。モン族とクメール族は紀元前1500年にはインドネシア半島に住んでいたと言われる。そして6・7世紀にはこの地に上座部仏教(小乗仏教)を普及した。しかし10世紀にはビルマ族とタイ族が南下して、大変好戦的に半島に支配権を拡げ、先住のモン族とクメール族の生活と文化を浸食した。その結果、1757年モン族の支配王朝は遂に滅亡して、モン族の多くが虐殺され、教典は焼かれるなど、事実上「母国なき民」となって各地に散らばった。その後も一時的に反乱を起こして王朝を再建したことはあったが、モン族はだいたいはビルマ人との共存をはかる道を選んで、東に住むカレン族やシャン族のように反政府武装闘争を行うこと今のところない。今日では大多数のモン族はミャンマーの首都ヤンゴンの南方のモン州に、また何万人かはドーナ山脈を西に越えたタイ領にも居住する。

 モン語は古くからインド系の文字を使っていた。この時代の仏教経典の文字を特に古モン文字という。それは貴重な文化遺産であるので、ミャンマー政府においても大学のビルマ語学ビルマ文学科の専攻科目に指定している。もっとも、それは古モン語を古典的に尊重するというよりはむしろ、古モン文字がビルマ文字の成立の母体になっているという事情のためであろう(写真参照<藤井文男)。

 モン語は「言語の島」だと言われる。それは、この言語が古いオストロアジア語の一つであり、その周りのビルマ語(=ミャンマー語)がシナ・チベット語族>チベット・ビルマ語派の一つで、一方、タイ語の帰属ははっきりしないが、少なくともモン・クメール語派ではない。だからモン語は異系統の言語に浮かぶ島ということになるからである。現在、モン語の話し手は50万人くらいだと言われている。ミャンマーに生活すればミャンマー語が生活語となるのでモン族の人たちはこの二つの言語で生活する必要がある。タイに住む場合はタイ語とモン語の二言語使用が必須である。モン語は公用語ではなく、教育言語でもない。そのためにとりわけ都会に住む場合は母語のはずのモン語を理解できない子供たちが鰻登りで増えてきている。夫婦の間ではモン語、子供にに話しかけるときはビルマ語という家庭も多いようだという(藤井文男「モン語を話す人々」月刊『言語』2006年5月)。

 ミャンマーの学校教育は公用語であるビルマ語で行われている。モン語をはじめ別の言語は事実上使用禁止であるという。この状態が続くと、モン語がさらに数世代生き残れるかどうかが危ぶまれる。そして、モン語を維持するための運動主体もまだない。ミャンマーの民主主義と人権に関わる状況はアウンサンスチーさんに対する処遇で象徴されるように、決して楽観はできない。