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【地球ことば村・世界言語博物館】

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世界の文字

シャパ文字(沙巴文字)

中国四川省涼山彙族自治州などに居住する少数民族アルス(爾蘇)族の一部で使われる象形文字。アルス文字とも呼ばれる。

アルス人は,原始巫術を信仰し,自然界の万物には神霊ありと信じている。シャパは東巴(とんぱ)と同様に,アルス人の精神の支えであり,人の禍福,災害疾病などの吉凶の判断,気候の寒暖など,日常の万事はシャパを招いて占卜してもらう。そのよりどころとなるのがシャパの経典であり,シャパ文字で書かれている,すべて竹筆で書かれた手写本である。

文書例

シャパ文字とトンパ文字の対照表

シャパ文字は,トンパ文字と共通するところが多い印象をうける。とくに,字形そのものとその配置の仕方はよく似ている。しかく,よく似た字形を示しながら,実際には読み方や表現する意味が違っている場合が少なくない。シャパ文字とトンパ文字の分かりやすい字形を選んで対照すると,次の表のようになる。

シャパ文字経典の一齣

巫師シャパは父子継承であり,沙巴経典も 400 年から 500 年ぐらい以前から代々伝承された。多種類の経典があるが,その中の一つ,「虐曼史答」(ニョオマシータ)の一齣がつぎの図である。大意は次のようになる。

二月十三日,申の日で土の属なり,晴天なれば盛皿と陶罐(とっくり)が出て,酒あり肉ありの喜びの日なり。曇天なれば変化が起き,地上に霧が出て,大風が樹を倒す。(大風が吹く兆しあれど)二つの明星が空に輝き,まあまあの好き日なり。

各字形はそれぞれ次の意味を示している。

1)猿の象形。申の日を意味する。その顔は黄色に塗られていて,その色が土の属となる。
2)皿の上の三角は,肉やその他の食物が盛られていることを示す。
3)陶器の酒器ととっくりの象形。
4)空に 2 つの明星が輝くさま。
5)大風で樹が倒れるさま。
6)夕方,霧(右下に書かれている)が出るさま。

シャパ文字暦書(正月)

アルス族は,1 年を 12 ヶ月,1 ヶ月を 30 日とするから,1 年は 360 日になる。暦は横長の紙に,上下を 3 段,各段に縦線 4 本をいれて全部で 15 齣の枠をつくる。各枠が 1 日を表わすので,紙の表裏で一月の暦になる。アリス人は,十二支を虎から始め牛に終わり,また虎に続いていく。図の左上隅は元旦に当たる。元旦の命運は次のように述べられている。

虎の日,日を紀(しる)す十二獣は,虎の日が年頭にあり,盤(おおざら)を奉げ食物を献じ,罐(かん)をもち美酒を斟む。日心に欠陥(ふび)あり,陽光(ひのひかり)は黯淡(うすぐら)い。宝刀は月のぼ旁(かたわら)にあり,残月(よあけのつき)は吉祥を較(あきらかに)す。衆(おおくの)星は燦爛と閃き,光輝(かがやき)は吉祥を顕(あきらかに)す。
以上の意味は,元旦の枠の中央に置かれた虎と,左上隅の「太陽」,右上隅の「月のそばの刀」,左中央の「陶罐」,三段目の「食物」,そして,右下隅の「衆星+?」によって表現される。

このような要点のみを記す表記法は,トンパ文字の使い方と原則的に一致するが,シャパ文字の方がより簡単な方法をとっている。シャパ文字による表記法は暗示的な覚書にすぎず,それゆえ,シャパ文字の経典類も,内容を十分記憶して伝承するシャパでなければ,正確には読み取ることはできない。

シャパ文字暦書

中国民族古文字研究会

[最終更新 2017/10/20]