地球ことば村
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【地球ことば村・世界言語博物館】

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世界の文字

白文字


白(はく)文字,僰文,方塊白字とも。現在の中国雲南省に建国された南詔王国(738~902)と大理国(937~1253)の有力な構成員として活動した白(ペー)族が使った変用・変形漢字。白族は古来漢族と深い交流をもち,漢語の強い影響を受けて,多量の語彙を借用した。白族は,国家としての公用語・公用文字としての漢語と漢字を用いるほかに,南詔の中期,8~9 世紀頃から漢字を使って白語を音写する方法をとり,それを漢文中に挿入した。そのような文章を「白文」と呼んでいる。(西田)

文字の構成

白文では,4つの原則に沿って独自の漢字が使われている。

1同義または近い意味の漢字で白語を書く。tsi42「十」,ku33「老」,pi35「風」(変用漢字=訓読)
2同音または近い発音の漢字で白語を書く。pɯ31pu33「不飽」(「尽きず,終わらず」の意)(変用漢字=借音)
3漢語からの借用語を漢字で表記する。tv35「東」,se35「西」,na21「南」,pɯ44「北」(借用漢字)
4漢字を変形して新字を作る。kɯ33「厚い」→哽,ku42「坐る」→踞 
変形漢字は他の変形漢字と同じように,偏または旁に音符・意符を置いた形声字(多数)または会意字(少数)の形をとっている。 1)会意字:旵tsha55(日と山)「朝食」 2)形声字 a)偏に意符,旁に音符の形:㑷 nɯ44「君の」口偏をつけて白文字であることを示す。哵 piɛr44「問う」,哽kɯ33「厚い」b) 2字を合成する。一字は音符,他の一字は意符の役割を果たす。奓 to42「大きい」。

下記の文字構成の原則は徐淋による。

白文例

【白文唱本】 [出典] 徐琳, 赵衍荪编著(1984)『白语简志』(民族出版社)


【仁王护国般若波罗密多经】 1956 年 8月に大理白族自治州鳳儀県にあった薫氏の宗祠(祖先廟)法蔵寺で発見された,南詔晩期から大理国の時期に書かれた「経典」の一部。朱筆の傍注や墨筆の疏記がついていて,その中に漢字で記した白語の「注釈」も含まれていた。(徐淋)

【詞記山花,詠蒼洱境】

明の景泰元年(1450)には大理喜洲人楊黼による蒼山洱海の秀美な自然景色を描写し故郷への慕情を著わした『詞記山花・咏蒼洱境』が刻まれた。Wikipedia 僰文山花碑こと「詞記山花,詠蒼洱境」碑。 明景泰元年(1450)刻。 作者は明代大理の著名な文人,大理下陽溪の人楊黼。 漢字を用いて白語を表記したもので,ぺー族民族の「山花體」の格式にて大理蒼洱の風光を詠う。僰文(方塊白字)白文史籍

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[最終更新 2019/04/20]