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【地球ことば村・世界言語博物館】

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世界の文字

ロヴァーシュ文字 英 Ancient Hungarian Runic characters


ロヴァーシュ文字(rovásírás,イーラーシュ írás は「文字」の意)はハンガリー語で「刻み文字」を意味し,硬い媒体に鋭い物で刻みつけた楔形文字の一種である。セーケイ・ロヴァーシュ文字(Székely-Hungarian Rovás, székely rováírás),マジャル(ハンガリー)・ロヴァーシュ文字(magyar rováírás),マジャル・セーケイ・ロヴァーシュ文字(magyar székely rováírás)とも呼ばれる。19 世紀までは,セーケイ人(székely,ハンガリーの有力な一派)の伝説に基づいて,フン文字(hunírás)とかスキタイ文字(szittya írás)と呼ばれていた。→ 深谷

ロヴァーシュ文字の成立年代は定かではないが,文字の系統からいって,マジャル人がのちにハンガリー使徒王国を建国することになるカールバート(カルパチア)盆地に征服定住する(895)以前の遊牧民時代にすでに使われていたであろうと推定されるが,確証はない(後述)。このマジャル人の居住している「歴史的ハンガリー」は第一次世界大戦後解体され,現在はルーマニア,ハンガリー,スロヴァキア,クロアチア,セルヴィア,オーストリア,ウクライナの 7 か国に分割されて今日に至っている。

文字構成

一般的にはチュルク系の文字(ソグド文字など)と親縁関係にあり,一部の文字はギリシア文字と古代スラヴ人のグラゴル文字からの借用である(5 字は確実にチュルク起源,10~11 字はおそらくチュルク起源,3 字はギリシア文字,2 字はグラゴル文字起源のも)と考えられている。系統は別であるが似た書記系に,ゲルマン人のルーン文字がある。

次のロヴァーシュ文字表は,15 世紀の現存する最古の確実な文章資料である「ニコルスブルク字母」(Nikolusburg,チェコ共和国南モラヴァ道ブジュツラフ Břeclav 郡ミクロフ Mikulov 町を指す)によるものである。

ニコルスブルクのロヴァーシュ字母 (→ Gábor Hosszú)


ロヴァーシュ文字表

ロヴァーシュ文字アルファベット,数字,合字の一覧を示す。これらの表は フリーフォント Rovas Szabvany jb Regular を用いて作成した。


数字

合字

ロヴァーシュ文字はチュルク系の文字体系が基本になってはいるが,マジャル人独自のもので,マジャル人の中でも,もっぱらセーケイ人が 17 世紀頃まで使用していた。この文字は,その独自の発展の中で独特の「合字」を作っていったが,本来のチュルク文字にはこれほど多くの合字はない。次に,合字の例を一部示す。この文字は,刻み板(または棒)に,右から左へ横書きに刀で刻んで「書いた」ものである。

ロヴァーシュ文字テキスト

サンプルテキスト

セーケイデルジュ村の刻文

セーケイデルジュ(Székelyderzs)村に残る,ロヴァーシュ文字の彫られた煉瓦。(1400 年頃)

チークセントミハーイ村教会の銘刻

チークセントミハーイ(Csíkszentmihály)村(現在ルーマニ国内)の教会の銘刻(1501 年)。


コンスタンチノポリス市の銘刻

コンスタンチノポリス(トルコ名:イスタンプル)市の銘刻。事実上,軟禁状態におかれていた使節の随員のケテイ=セーケイ・タマーシュ(Keteji Székely Tamás)が 1515 年にエルチ・ハーネ(使節館)の納屋の壁に刻みつけたものを 1553 年に写し取ったもの。

ボロニャ暦

イタリア人皇軍工兵将軍ルイジ・フェルディナンド・マルシリ(Luigi Ferdinando Marsigli)伯爵が 17 世紀に記録した 15 世紀の「セーケイ万年暦」(『ボロニャ暦』とも)。


ミシュコルツィのロヴァーシュ文字表

ロヴァーシュ文字の発展に重要な役割を果したミシュコルツィ(I. Miskolci Csulyak,1575~1645)による 2 種類の文字表。

エーンラカ村の遺物

エーンラカ(Énlaka)村の遺物の銘刻(1668年)。(→ ScriptSource)

アルファベット表と「主の祈り」

M. Bel の著書 “De vetere literatura hunno-scythica exercitatio” (1718) に掲載されたアルファベット表と「主の祈り」

G. ヘンセルの多言語地図

ドイツの神学者・言語学者 G.ヘンゼルが描いた多言語地図(1730)。「主の祈り」は、ラテン系の古ハンガリー正書法によるハンガリー語で書かれている。また、地図の下の表の最初の行では、当時のセーケイ・ハンガリー・ロヴァーシュの文字表が掲載されている。(拡大図

カルパチア盆地のロヴァーシュ文字

マジャル人がのちにハンガリー使徒王国を建国することになるカルパチア(カールパート)盆地に征服定住する(895)以前の遊牧民時代にすでに使われていたであろうと推定される文字。 (→ Carpathian Basin Rovas

Blessed Lady Our Mother, a Christian song

文字表

表は,フリーカルパチアロヴァーシュ文字フォント:Ravas Karpa-medencei を用いて作成した。

現代のロヴァーシュ文字

テレフォンカード

ロヴァーシュ文字を配したテレフォンカード(2002)。

書籍

ロヴァーシュ文字版書籍 左) “Eclipse ofthe Crescent Moon” (2009),右) “Seven and Seven Hungarian Folk Tales” (2010), transcribed to SHR (Szekely-Hungarian Rovash) by Rumi, Sipos, and Somfai.

現行のハンガリー文字

若干の文字は,2 つまたは 3 つの文字で記される。シーポシュ・ラースローは,「ロヴァーシュ文字はハンガリー語の全ての音を固有の文字で表すことができるため,2 重・3 重文字まであるローマ字表記より子供にとっては習いやすい…」と述べ,ロヴァーシュ文字復活運動に肯定的な見解を示している。

古ハンガリー文字テキスト入力

ユニコード

古ハンガリー文字のユニコードでの収録位置は U+10CB0..U+10CFF である。フリーフォント:OldHungarian

関連リンク

[最終更新 2018/08/20]