地球ことば村
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【地球ことば村・世界言語博物館】

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世界の文字

線文字A 英 Linear A


アルファベットが使用される以前,紀元前 2 千年紀の青銅器時代のギリシア―より正確には,クレタ島を中心とするエーゲ世界―で行われていた「ミノア文字」と総称される文字の一形態で,これらの文字の発見者であり,その研究に初めて着手したアーサー・エヴァンズ(Arthur J. Evans, 1851-1941)によって「線文字A,(ミノア線文字A Minoan Linear A)」と命名された。これと同系の文字として,ほかに,線文字B(ミノア線文字B),クレタ聖刻文字(またはミノア象形文字),キュプロス・ミノア文字などがある。右図は,クノッソス宮殿で発見された杯の内側に螺旋状に刻まれた線文字A(拡大)。紀元前 1500 年頃。 [ミノア文字年譜

線文字Aの資料としては,ミノア時代の王宮の財政的記録と見られる粘土製の書版が主なものであるが,そのほかに,封印用に使われた 1 ないし 2 文字を刻んだ小さな粘土盤(cretulae),粘土塊(nodulae)および押印(seals)の類,またそれとは別に,粘土,石,金属製の主として宗教的な奉納物などに記された刻文や壷面の記銘などがある。

セム語であれ印欧語であれ,線文字Aを既知の言語に結び付けて解釈しようとするこれまでの試みは,いずれも確実な結論に到達したというにはほど遠い。すでに 19 世紀以来,大方のギリシア学者の間で定説となってきたように,ギリシア語以前の古いエーゲ世界の言語が,セム語でも印欧語でもないある未知の,しかも系統的に孤立した言語層に属するとすれば,線文字Aも当然これにつながる言語である可能性が高いといわれる。 [1]

文字構成

これまでに発見された線文字Aの資料は,ゴダールとオリヴィエ(Godart & Olivier, 1976~1985)による 5 巻本の資料集として集大成された。 [2] これは,テキストの原寸大の写真,それの模写(facsimile)と実物転写,および標準文字による転写からなり,最終巻には標準化された文字表と索引および補遺が含まれ,現在最も信頼できる線文字Aの資料集である。ほかに,線文字Aを数字化したテキストとして,レゾンとホープ(1977, 1980)があり,線文字Aテキストの分析や統計的研究に役立っている。 [3]

ゴダールとオリヴィエによって示された文字表は,線文字Bと同じ分類法が採用された。両者で形が共通するものは〈AB〉,線文字Aにしか現れないものは〈A〉とされ,ABの文字番号は線文字Bと同じである(1~191 番),他方,A類の文字は,通常の単純文字は 300 台の数字,そのうち壷を表す表意文字は 400 台の数字,複合文字は 500 台以上の数字によって配列されている。登録された文字の総数は,単純文字が 178 (AB類 84 文字+A類 94 字),複合文字が 164,度量衡(分数)文字が 47 で,合計 389 となっている。

単一文字

単一文字

単一文字(壷)

複合文字

度量衡文字

テキスト

サンプルテキスト

アヤ・トリアダ(Haghia Triadha)で発掘された約 150 の書板の一つ。→ Godart & Olivier


関連リンク・参考文献

[最終更新 2018/08/20]