地球ことば村
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【地球ことば村・世界言語博物館】

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世界の文字

書写材料

バタク文書 (樹皮紙 4,竹)


インドネシア共和国のスマトラ島,北スマトラ州,トバ・バタク地方,シマルグン・バタク地方に広く分布するバタク(バタックとも)語を表記するバタク文字で書かれた文書をバタク文書という。形態,内容とも様々でいくつかの種類がある。一つは,竹や骨片を用いたものと,量的にも内容的にもより重要なのがトバ語でプスタハ( pustaha)と呼ばれる経本で,内容は,卜占書,神話,系譜,呪文などの貴重なテキストである。

プスタハ

バタク人の宗教生活について貴重な情報をもたらすものにプスタハがある。ダトゥ(datu)と称されるバタクの呪師が保有する書物は,プスタハ・ラックラック(Pustaha Lak-lak,単にプスタハ)と呼ばれる。プスタハは書物,ラックラックは樹皮の意であるから,これは樹皮本という意味である。その名のとおり,なめした樹皮を素材としている。この樹皮を折本に造り,そこにバタク文字を用い,バタク語で,ダトゥが知るところの,日々の吉凶占い,さまざまな防潔呪術(パグルバラン),鶏を使った占いの方法,吉凶のしるしの読み取り方,さまざまな呪薬(dorma)の解毒法についての指示など,ダトゥが依頼をうけて占うときに参照する内容が記される。→ 山本春樹

経本は,スマトラ沈香(アリム,bark of the alim (Aquilaria malaccensis) Philippine Native Forest Trees Batak Textsの内皮を一定の幅で適当な長さに切り取り,これをなめしたものを素材として折り本仕立てにした写本である。裏表には厚さ5mm~1cmの木製の表紙が糊付けされる。煤煙墨を用いて書き記した。→ 柴田 下図は,左から樹皮を叩き延ばす際に用いる小槌と丸太の台,剥いだばかりの樹皮。→ 小林

サンプル

手稿経本(樹皮紙折本,縦 9 × 横 11 × 高さ 2 cm,12 折,トバ・バタク地方)月日の吉凶占いについて記述したもの。呪術師(ダトゥ)が依頼をうけて占うときに参照する。トバ・バタク地方で使用される言語はバタク語トバ方言、使用される文字はバタク文字トバ変種である。→ 八杉佳穂,図:中西コレクション 

手稿経本(樹皮紙折本,縦 12 × 横 18 × 高さ 14 cm,25 折,シマルグン・バタク地方)さまざまな防潔呪術(パグルバラン)について記述したもの。シマルグン・バタク地方で使用される言語はバタク語シマルグン方言、使用される文字はバタク文字シマルグン変種である。

射撃の規範(樹皮紙折本,縦 10.5 × 横 9.8 cm,15 葉中の第 11 葉)内容は,鉄砲の撃ち方を説明したもので,「射撃の規範 Poda ni Tembak」と題されている。左端が第 1 行,右端が第 9 行である。第 1 行の左に見える線はテキストの段落の始めを示すもので,したがって,左上の挿絵は前の段落の挿絵て,右側の挿絵がこの段落に対するものである。→ 柴田

鶏を使った占い(手稿経本 樹皮紙折本縦横高さ13x17x2.5 cm 8 折)アジ・ナンカ・ピリン呼ばれる占いの方法,吉凶のしるしの読み取り方,同儀礼時の食事の内容について記述したもの。→ 中西コレクション

手稿経本(樹皮紙折本,縦 25 × 横 17.5 × 厚さ 8 cm)National Gallery of Australia, Canberra 所蔵

各種折本の例 → Kumar。スマトラ島南部で話される古ムラユ語・ルジャン語を表記するルジャンン文字にも,樹皮(Bunut)を使用した同様の折本の例が見られる。

竹片に短い文ないし数個の単語が記入されたもので,これはおみくじの一種といえるものである。また,丸竹の表面に記された文書の内容は主に占の暦(Porhalaan)で,ほかに通信文や布告文の類もある。竹の長さは数十センチメートルのものから 1 メートルを越すものまでさまざまである。

トバ・バタクの名称でドンドゥンという竹製のおみくじ。(縦 15 × 横 9 cm)月日の吉凶占い(暦)が書かれており,そこに書かれている内容で依頼をうけた呪術師が占いをする。

手稿暦(竹筒 円周 10 × 高さ 24 cm,2本1組)トバ・バタクの名称でポルハラアン。竹筒の表面に月日の吉凶占い(暦)が書かれている。→ カレンダー

非宗教的な内容のテキストも時々竹に書かれる(円周 2.8 × 長さ30.5 cm)。ここでは,故郷を去ることになった子へ思いが綴られている。Laments

各種竹筒の例 → Kumar。フィリピンのミンドロ島で話されるマンヤン語を表記するマンヤン文字でも 同様の竹筒を用いた文章の例が見られる。

水牛の角・肋骨

シマルグン・バタク族に伝わる,日々の吉凶占い(ポルハラアン)についての指示が記述された水牛の角で,呪術師が占うときに参照する。護符(サラン・ティマ)として使われることもある。使用される言語は,バタク語シマルグン方言,使用される文字はバタク文字シマルグン変種である。→ 中西コレクション

カロ・バタク族が使用した肋骨で作られたお守り。正面には絵が描かれ、背面には碑文が描かれている。 図面は,擬人化された昆虫/人間の姿で,棘のある体と毛むいた顔を描いている。Rib bone pagar Karo-Batak

片側には、月の日を描いた切開カレンダーが,もう片面には、星座を表す刻み目のある六角形のモチーフと,5列のバタク文字が刻まれた砂時計型のモチーフが掻かれる。

カロ・バタク族のお守りベルト。6 個の骨片には短い神託と挽歌が,5 個の短い竹筒には挽歌の断片が書かれる。 → Kumar

関連リンク・参考文献

[最終更新 2019/02/20]