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【地球ことば村・世界言語博物館】

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世界の文字

マンダ文字 英 Mandaic script


古代のグノーシス主義(Gnosticism)に由来するマンダ教(Mandaeism)を信じる少数派集団であるマンダ人(Mandaean)が,マンダ語(Mandaic)の表記に使用する文字。アラム文字の発展形なので,右から左向きに横書きする。→ 高階

パレスチナのヨルダン川での洗礼を重視する集団が,遅くとも 2 世紀に,メディア地方(Media,クルディスタン東部)に移り,3 世紀にはメソポタミア南部に進出し,後にマンダ人となったと考えられる。宗教に関わる聖職者と一般人との間に厳格な区別があり,マンダ文字の使用はほぼ聖職者に限られる。イラクではアラビア語,イランではアラビア語とペルシア語を日常言語とする。

アッシリア帝国とアケメネス朝ペルシアの広大な版図で共通語として使用されたアラム語とアラム文字は,前 330 年に後者が滅亡し,アレクサンダー大王によるヘレニズム世界の登場によって政治・文化の中心を失うと,地域の事情に応じて言語と文字が発展し,後 3 世紀以降の中期アラム語(Middle Aramaic)の時代には,東西の地域特徴が明瞭に区別されるようになった。マンダ文字は,シリア北部のシリア・パルミラグループ(シリア文字パルミラ文字),メソポタミア北部グループ(ハトラ文字など)とともに東アラム文字(Eastern ramaic scripts)に属し,そのメソポタミア南部グループを代表する。

メソポタミア南部の東アラム文字とナバタイ文字

文字構成

マンダ文字のアルファベットは,冒頭の 4 文字の名前を並べて abagada/abāgāda と呼ばれる。文字名の最初の子音が,その文字の音価であるとの原則は保持されているが,アラム文字を使用する他の言語とは異なり,伝統的な文字名,ʼĀlep̄, Bēṯ, Gāleṯ は伝承されていない。文字数は本来 22 であるが,神秘的な教義の必要から ā の反復と,dā の異字体の参入により,24 文字あると見なされている。

古典期以降,アラビア語やペルシア語からの借用語彙でマンダ文字にない音は,類似音の文字の下に 2 個の点からなる識別記号をつけて表記する。アラム文字系の文字を使用する他のセム語が子音文字の上下に特別な記号を付加して母音を表記するのとは異なり,マンダ語では,これらの言語でも使用される「読みの母(mater lectionis)」の方法により,一部の歴史的綴りを除き,母音が「完全表記(scriptio plena)」される。すなわち,子音字の後に文字 ā,wā,yā を付加して母音 a,u,i が示される。→ マンダ文字表 Mandaic alphabe


マンダ語テキスト

サンプルテキスト

祈禱書 (Qolastā)の一部。→ Rudolph, Kurt (1978) Mandaeism. (E. J. Brill)

イラクで出土した,石碗に書かれたマンダ語の呪文文書(5 世紀)
メソポタミア地域の民間信仰として広まっていた悪霊を追い払う呪詛文書(Incantation text)が鉢や鉛の板に書かれたものが見つかっている。これらは世俗的な内容で正統的マンダ教とは関連しないため,字形はかなり崩れたものとなっている。図 → Gnosticism and Early Christian Culture

テキスト入出力

ユニコード

マンダ文字のユニコードでの収録位置は U+0840..U+085F である。フリーフォント: Noto Sans Mandaic があるが,特定の入力方法は存在しない。一般的な入力方法については 多言語環境の設定 を参照。


フリーフォント "Mandaic" では,マンダ文字がアラビア文字領域に配置されているので,アラビア語の仮想キーボードを用いた入力が可能である,

関連リンク・参考文献

[最終更新 2018/10/20]