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【地球ことば村・世界言語博物館】

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世界の文字

サマリア文字 英 Samaritan script


サマリア(現代名セバスティヤ)は,分裂後のイスラエル王オムリが前 880 年頃に建設した首都である。その国はのちアッシリアの属領となって異民族と雑婚が行われたため,バビロン捕囚から解放された南方のユダの民からサマリア人として排斥され,前 3 世紀にユダヤ人から宗教的にも分離した。サマリア人は前 6 世紀以降,旧約聖書の完成していく過程をユダヤ人と共有せず(ゆえに冒頭のモーゼ五書のみを聖典とする),言語も文字も異なった発展をたどった。→ 高階

文字構成

全部で 22 個の文字は連字されることなく,右から左に横書きされる。借用した先カナアン文字に母音字がなかったために,子音のみを表記する表音文字であるが,兄弟関係にあるフェニキア文字と異なり,古ヘブライ文字の段階ですでに,語末母音 a, e, o を h で,u を w で,i を y で表記していた(「読みの母(matres lectionis)」)。後代の写本では,語中に y, w を挿入して i, u を示すことを多用した(ユダヤ人の五書とサマリア版の相違は約 6 千にもなるが,大半はこれに起因する)。


サマリア文字の字体の変遷

サマリア文字の字体は「完全文字」(Majuscule, harf kāmil,また mujallas 「正しく捉えられた」文字)と「半文字」(Minuscule, niṣf al-ḥarf 「文字の半分」,また ṭaraš 「なおざり」文字)に区別され,前者はモーゼ(サマリア)五書や題字,見出しなどに,後者は祈禱書や日常の文書に使用される。表 → Pummer


I: 古ヘブライ文字(前 6 世紀 アラド,ラキシュ陶片)II: 五書写本(1215/6)III, VII: 17 世紀中葉の写本 IV, VIII: 現代の写本 V, IX: タイプライター印字体 VI: サマリア・ショア記写本(1513)X:European print, a number of texts and part of texts in older European works were printed in this script.

サマリア語テキスト

サンプルテキスト

ホロン(イスラエル・テルアビブ近郊の都市)のユダヤ教礼拝堂で用いられるトーラーの1つ。ユダヤ人とは対照的に,サマリア人はシナゴーグにおいてトーラーを朗読することなく,常に同じ箇所(レビ記 9:22)が開かれていた。→ Pummer

トーラーサマリア五書

サマリア五書写本(申命記 12:5)→ The Samaritan Version of Deuteronomy and the Origin of Deuteronomy拡大

概して,サマリア文字碑文は五書の文言を彫ったものが多く年代の記入がないため,それを特定することが困難である。たとえば,ほぼ完全な形で残った「創造の十話」碑文(創造物語中の神の言葉を列挙したもの)は,完成した典型的なサマリア文字であるが,おそらくビザンツ時代の製作という以外にはわからない。→ 高階

「創造の十話」碑文

母音記号つき五書テキスト

1982 年に,手書文字により完全な母音記号を付した五書が出版された。次はその冒頭,創世記 1:1-5 を掲げる。

隔週間新聞「A.B サマリア・ニュース」

題字にはサマリア文字が使われ,本文はヘブライ文字が用いられる。→ A.B. THE SAMMARITAN NEWS 1 March 2015 Samaritan Date 11.12.3653

テキスト入出力

ユニコード

サマリア文字のユニコードでの収録位置は U+0800..U+083F である。フリーフォント: Noto Sans Samaritan


入力方法

特定のサマリア語用キーボードは存在しない。入力方法については 多言語環境の設定 を参照。なお,アスキー(英語)キーボードに対応したフリーフォント Samaritan とサンプルテキストが Meroïtic & Samaritan に掲載されている。ただし,母音記号等は含まれない。

関連リンク・参考文献

[最終更新 2018/10/20]