地球ことば村
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世界の文字

ミシュテカ文字 英 Mixtec writing,西 escritura mixteca


「8 の鹿ージャガーの爪」王,4 人のジャガーと出会う [Unknown / Public Domain / 出典]
メソアメリカの編年後古典期(900~1500)から征服期にかけて,メキシコ南西部のミシュテカ地域で独特の絵文書が作られた。これらは,ティラントンゴ(Tilantongo)やテオサクァルコ(Teozacualco)などの王国を支配する支配者層の歴史的な記録である。これらの絵文書は,文を表音的に表記するのではなく,イメージによって直接情報を伝える独特な書記体系であり,絵画表現の基本要素は様式化している。その慣用表現は,ミシュテカ語やミシュテカ語が話される地域の風物や文化に強く根ざしたもおである。[八杉 p. 1021]

ミシュテカ文字は,隣接のプエブラ州やラスカラ州のスペイン人征服前の文字,とくに先住のサポテカ文字と関連を持つが,その起源は不明である。ミシュテカ語とサポテカ語は同じオトマンゲ語族に属するので,何らかの言語的関係があったと考えられる。したがって,文字にも関連があったと思われる。しかし,ミシュテカ文字は独特の特徴をもち,のちのアステカ文字にはとくに大きな影響を与えている。アステカ帝国の覇権の反映から,現在も,このミシュテカ語圏の地名はアステカの言語ナワトル語で表示される。[植田 p. 962]

ミシュテカ文字は,主に人名・地名だけを記録しているので,限定的または部分的文字体系といわれ,絵文字の段階にとどまり,それ以上に発展しなかった。すなわち,文字学上,初期あるいは形成段階の文字である。表語文字がその中心であって,表音的な原則もある程度ミシュテカの絵文書に導入されてはいるが,ごく初歩的な段階にすぎなかった。この文化の特徴の1つは,スペイン人征服前に作られた絵文書がかなり現存していることで,メソアメリカの絵文書作成伝統の中でも最も重要な地域である。[植田 p. 963]

ミシュテカ文字テキスト

絵文書は歴史的な記述が主であるが,宗教・儀式的な記録もある。供物を捧げたり,流血儀式なども記されている。新年の新しい灯りをともす儀式や神話なども扱われている。場面は水平または垂直線で分けられ,右から左,上から下または下から上に牛耕式に読まれる。[八杉 p. 1031]

中央のシーンは、ミシュテカの起源を、祖先が木から生まれた人々として描いていると思われる。Codex Vindobonensis, plate 37, [Anonymous / Public Domain / 出典]
Codex Zouche-Nuttall, page 20 [Unknown / Public Domain / 出典]

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[最終更新 2022/01/20]