地球ことば村
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【地球ことば村・世界言語博物館】

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世界の文字

カイティー文字 Kaithī lipi 英 Kaithi letters


北インドの書記カーストたるカーヤスタ(Kāyastha)が用いてきた文字で,その名称 Kaithī は,カースト名の変形した Kaith に文字・言語の名称を形成する接尾辞 -ī を付したもの。デーヴァナーガリー文字の古形の東部系に属し,広く北インド一帯のカーヤスタの間で用いられてきたが,現今では,主にビハール州のビハーリー諸方言帯に限られて使われている。そのためこれを,ビハーリー文字(Bihari letters, Bihārī lipi, ビハール文字とも)ということもある。→ 坂田

方言地域による文字形

現在のカイティー文字は,地域的に3つの形をもつ。1)マイティリー方言地域で用いられる曲線の流れが非常に美しいティルフティー・カイティー文字。2)ボージュプリー方言地域で用いられるデーヴァナーガリー文字に近いボージュプリー・カイティー文字は,/u/ と /ū/を別々の文字で表す。3)マガヒー方言地域で用いられるカイティー文字の代表格であるマガヒー・カイティー文字。→ Griereson 1903 言語地図

ティルフティー・カイティー文字 Tirhuti-Kkaithi

マイティーリー語 Tirhuti-Kkaithiインドのビハール(Bihar)州東北部と,その北に隣接するネパール王国の平地部で話される,インド・ヨーロッパ語族,インド・アーリア語派に属する言語。この地方では,今では印刷にデーヴァナーガリー文字が使われるが,古くはサンスクリット語文献もマイティリー文字で書かれ,庶民と書記(カーヤスト)の記録・通信などはカイティー文字でなされる。

マイティリー文字(青字で示す)は,書記体系としてはデーヴァナーガリー文字とほぼ同じであるが,字形はそれよりも丸みを帯びてベンガル文字に近い。マイティリー文字が用いられる地域の中心ティルフト(Tirhut)地方にちなんで,ティルフティー文字(Tirhut lipi)ともいわれる(フォントはここからダウンロードする)。「ティルフト」とは「川岸の恵みを享受する(地方)」の意で,ガンジス,ガンダク,コーシーの3河川に囲まれた一帯を指す。【出典】飯田貞二(1992)「マイティリー(語)」『世界言語編(下2)』(言語学大辞典,第4巻,三省堂)

サンプルテキスト

図上:世界人権宣言,図下:Grierson 1899


関連サイト


ホージュプリー・カイティー文字 Bhojpurī-Kaithī lipi

ボージュプリー・カイティー文字 インドの,ウッタル・プラデーシュ州(Uttar Pradesh,「北部州」の意)の東部と,ビハール(Bihar)州の西部,および,それらの州の北に隣接するネパール王国の平地部で話される,インド・アーリア語派に属する言語(方言)。話者人口が4,100万人(推定)にものぼり,15世紀以来の文学的伝統があることなどを理由に,ボージュプリーを公用語化させようとする動きもあったが,強い支持を得るには至らなかった。なお,この地域では,カイティー文字の一変種,ボージュプリー・カイティー文字が用いられる。【出典】飯田貞二(1992)「ボージュプリー(語)」『世界言語編(下1)』(言語学大辞典,第3巻,三省堂)

サンプルテキスト

図上: 世界人権宣言,図下 Grierson 1899


関連サイト


マガール・カイティー文字 Magahī-Kaithī lipi

サンプルテキスト

図上:世界人権宣言,図下 Grierson 1899


標準カイティー文字

今日のカイティー文字は,基本的にデーヴァナーガリー文字とさして違わないが,書記体系としてはかなり簡略化されているため,正確な表記ができない欠点をもつ一方で,早く書ける利点をもつ。すなわち,デーヴァナーガリー文字の上部の横棒を省き,/i/ と /ī/,/u/ と /ū/をそれぞれ1つの文字で表記し,頻度が低く歴史的に新しい子音字を欠いている。


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ユニコード

カイティー文字のユニコードにおける位置は U+11080..U+110CF である。ここではカイティー文字フォントとして, Noto Sans Kaithi を用いた例を示す。


関連リンク・参考文献

[最終更新 2019/01/20]