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【地球ことば村・世界言語博物館】

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世界の文字

ファイストス円盤文字 英 Phaistos Disc script


ファイストス円盤 [ Asb on de.wikipedia / CC BY-SA 3.0 / 出典]
1908 年,クレタ島南部のファイストスのミノア時代の宮殿址から,イタリアの考古学者ペルニエ(L. Pernier)によって発見された,粘土製の円盤に書かれた文字。この円盤は,直径 16 cm,厚さ 1.5~2 cm の良質の粘土盤で,その両面にきわめて具象的かつ様式化された文字が螺旋状に記されている。粘土盤の所属年代は,他の出土品から見て,中期ミノア IIIb の層(前 1650 ~ 前 1550 頃)と見られる [1]

このテキストで注目されるのは,通常の粘土板文書と違って,一種の「活字」(おそらく木製の)を使って柔らかい粘土板に印字するという方法で文字が書かれている点である。したがって,それぞれの文字の認定が簡単で,しかも盤の保存状態がよいので,テキストは正確に読み取ることができる [2]

文字構成


テキスト

文字の性格

これらの文字が表意文字かそれとも表音文字か,あるいは両者の混合であるかという問題もある。可能性がきわめて高いと見られるのは,象形文字も含めた他のミノア系文字と同じように,音節文字(それも日本語の仮名と同じ CV という開音節構造の文字)であったとする説である。音節文字にもかかわらず具象性と絵画性がきわめて強いのは,とくに装飾的な目的のために「活字」としてこのような文字がつくられたからであろう。なお,これらの文字を音節文字と見ると,線で区切られた 2 ないし 7 の文字群は分かち書きされた単語と見なされるであろう[3]

テキストの長さは A 面が 123 字,B 面が 119 字で,2 ないし 7 の文字群が縦の線で区切られ,そのような文字群の数は A 面に 31,B 面に 30 数えられる [2]

盤上のテキストを螺旋の外側から内側へ,すなわち左方向に読むか,それとも内側から外側へ,すなわち右方向に読むかという問題があり,現在でもまだ結論は出されていないが,最近では左方向説をとる学者が多い [3]

左:B 面,右:A 面。円盤に記録された文字はここを参照。 [Unknown / CC BY-SA 3.0 / 出典]

ユニコード

ファイストスの円盤文字のユニコードでの収録位置は U+101D0..U+101FF である。


関連リンク・参考文献

[最終更新 2021/11/10]