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【地球ことば村・世界言語博物館】

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世界の文字

ロンゴロンゴ文字 英 Rongorongo script


イースター島文字(Easter Island script,ラパヌイ文字(Rapanui script)ともいう。チリ共和国ラバヌイ島(イースター島)でかつて使われた,絵文字あるいは象形文字である。ただし,文字性に関する議論はまだ決着していない。「語り部の板(kohan rogorogo,/g/ は軟口蓋鼻音 [ŋ])と呼ばれる文字板などに陰刻されて伝わる。運用に関する知識はほぼ完全に失われた。19 世紀末以来,多くの研究者が解読に努めたが,現在に至るまで解読に成功していない [1]

ロンゴロンゴの刻まれた紫檀製の胸飾り(レイミロ,文字板 L ) [unknown / CC BY-SA 3.0 / 出典]

この文字は,発見当初こそラパヌイ文化の古い伝統に属すると考えられたが,現在では,ヨーロッパ接触(1722 年)以後,島民によって創作されたと考えられている。古い伝統ではないとされる理由は,その存在が考古学的には証明できないこと,文字をめぐる口頭伝承が矛盾だらけであること,などである。また,島外からの伝来が否定される理由は,個々の文字の形状として象形された事物が,すべて島の自然と伝統文化の中に存在していることである。創作の材料となったのは,石刻絵文字(petroglyph)や刺青の図案などである [1]

ロンゴロンゴ文字テキスト

文字性に関する議論には,この文字が備忘のための絵文字(pictograph)にすぎないとする説と,十全の象形文字(iconomatography)であるとする説がある。現在も解読を続けている人々は,この文字を表語性と表意性を備えた象形文字と考えている [1]

現存する資料は,木材に刻まれた 26 点のテキストが残されており,それぞれ 2 から 2,320 の単独の絵文字と,合計で 15,000 以上の合字の絵文字が刻まれている [2]

サンプルテキスト

下図は,小サンティアゴ文字板(Rongorongo Tablet G [Small Santiago])と呼ばれるものの表面である(32 cm × 12 cm × 2 cm

「小サンティアゴ文字板」[Unknown / GFDL 1.2 / 出典]

「小サンティアゴ文字板」の表面の Fischer [3] による模写 [Anonymous - Fischer, Steven Roger / Public Domain / 出典]

倒立牛耕式文字配列

上掲「小サンティアゴ文字板」のテキストは左下に始まり左上に終わる。倒立牛耕式(inverse boustrophedon)と呼ばれる文字配列をとる。各行は左から右に横書きされている。奇数行の文字は正立しているが,偶数行の文字は倒立している。したがって,各行の終わりで文字板を 180 度回転し,天地を逆転させて読むことになる [4]

次の図は,RongoRongo Glyphs を用いて作成した。

ペトログリフ

イースター島はポリネシアの中でも,さまざまな種類のペトログリフが最も多くみられる場所である。家屋や石壁や,モアイ像,「プカオ」と呼ばれるモアイの頭の被り物の表面など,絵を描くのに適していると思われる壁面のほとんど全てにペトログリフが見られる。図形のデザインは,古くからの鳥人信仰に基ずく競技における勝者(tangata manu =鳥人)の図など,儀式の中心として描かれたものや,創造神マケマケの肖像,ウミガメ,マグロ,タチウオ,サメ,クジラなどの海洋生物,ニワトリ,カヌーなどがある。ペロトグリフに見られる人間型や動物型の図形の中には,ロンゴロンゴ文字に対応するものも存在する [5]

バルテルが発表した絵文字の一例 [Jacques B.M. Guy / Public Domain / 出典]

下図は,Easter Island Foundation が販売しているフォント“Rapanui Dingbats” に含まれる,ペトログリフと絵文字の例である。

関連リンク・参考文献

[最終更新 2021/12/10]