nƂΑ
言語学者・文化人類学者などの専門家と、「ことば」に関心を持つ一般市民が「ことば」に関する情報を発信!
j[
悤

【地球ことば村・世界言語博物館】

NPO(特定非営利活動)法人
〒153-0043
東京都目黒区東山2-9-24-5F

http://chikyukotobamura.org
info@chikyukotobamura.org

世界の文字

アグヴァニア文字 露 Агванское письмо


アグヴァン文字とも。アグヴァニア文字とはアグヴァニア地方,すなわち現在のアゼルバイジャンの北部と西部,および,ダゲスタン地方の南半分において,5 世紀から 9 世紀までアルバニア人によって使われた文字である。このアルバニア人は現代のバルカン半島のアルバニア人とは全くの別民族であるため,カフカース・アルバニア文字(Кавказское-албанское письмо)とも呼ばれる。右図:カフカース・アルバニア王国 386~706 年(赤破線枠内)

歴史的に見ると,アグヴァニア文字はグルジア文字アルメニア文字とほぼ同じ頃,西暦 5 世紀に作られ,全体としてこの 3 つの文字は似ているところがあるので,これらの文字をアルメニアの学僧メスロプ・マシュトツ(Месроп Маштоц)の創作だとする説も,あながち否定するわけにはいかない。

文字構成

文字構成は,母音字と子音字の他に,2 つの記号で 1 つの母音を示す文字からなる。中でも [u] の音を示すのに,ギリシア語,それを模範としたスラヴ語系のグラゴル文字と同様に, [o] と [w] を示す記号を組み合わせている。これは,左から右へ書く点も含めて,ギリシア語を手本としていることを示している。このアグヴァニア文字は,グルジア文字,アルメニア文字,グラゴル文字同様,文字が数値を示すことでも共通している。(参照 → アルメニア語・グルジア語百科事典)

アグヴァニア文字 左;文字と音価,右:碑文 → Степанов

アグバニア文字表 → Omniglot>

アグヴァニア文字テキスト

サンプルテキスト

カフカス・アルバニア王国の台座

アグバニア文字が刻まれた、カフカス・アルバニア王国の台座(ミンゲチェヴィル出土)。


上掲碑文の転写と翻訳。→ http://www.unicode.org/L2/L2011/11296r-n4131r-caucasian-albanian.pdf



マテナダラン所蔵のアグヴァニア・アルファベット表

アルメニア共和国エレバンにある世界有数の古文書館(公文書館)であるマテナダラン所蔵のアグヴァニア・アルファベット表(15 世紀)。1937 年,Ilia Abuladze によって発見された。この手稿には,比較のためにギリシア文字などを掲載し,アグヴァニア文字には,アルメニア語で説明が記載された。 → Caucasian Albanian alphabetThe "Albanian" Alphabet

サンプルテキスト

Preliminary proposal for encoding the Caucasian Albanian script in the SMP of the UCS

ウディン語

このアグヴァニア文字がいかなる言語を表記したものであるかという問題に関しては,カフカース諸語中のダゲスタン諸語の中のレズギ諸語に属するウディン語(udin,ウディイ Udii)の研究が,古来,注目を集めてきた。アグヴァン文字の研究者クルモフによると,アグヴァン文字の数とウディン語の音素の数は近く,また,たまたま残されたアグヴァン文字で書かれた月の名がウディン語で解釈できること,「私」という人称代名詞なども読み取られるという。これらから,アグヴァン文字で書かれた言語がウディン語であることも認められつつある。

現在のウディン語は,アゼルバイジャンの北西の 2 つの集落と,ジョージア(グルジア)の東の 1 つの集落で話される,2 つの方言に分れるが,(固有の)文字を持たない。アグヴァニアの歴史的運命は,7 世紀から何度も繰り返された壊滅的な襲来によりその言語を用いていた民族が文字を失ったものとして捉えられる。もし,アグヴァン文字がウディン語を表記したものだと実証されれば,1度文字をもった民族が無文字になったという珍しい例である。

テキスト入力

ユニコード

ユニコードでは,U+10530..U+1056F の位置にアグヴァニア文字が配置される。フリーフォント: Unifont Upper

関連リンク

参考

“Haykakan sovetakan hanragitaran”「アグヴァニ文字表」アルメニア語百科事典掲載


“Kʿartʿuli sabčotʿa encʿiklopedia” 「アグヴァニ文字」グルジア語百科事典掲載

[最終更新 2018/08/20]