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【地球ことば村・世界言語博物館】

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世界の文字

アグヴァニア文字 露 Агванское письмо


古代コーカサス [PANONIAN / Public Domain / 出典]
アグヴァン文字とも。アグヴァニア文字とはアグヴァニア地方,すなわち現在のアゼルバイジャンの北部と西部,および,ダゲスタン地方の南半分において,5 世紀から 9 世紀までアルバニア人によって使われた文字である。このアルバニア人は現代のバルカン半島のアルバニア人とは全くの別民族であるため,カフカース・アルバニア文字(Кавказское-албанское письмо)とも呼ばれる。

歴史的に見ると,アグヴァニア文字はグルジア文字アルメニア文字とほぼ同じ頃,西暦 5 世紀に作られ,全体としてこの 3 つの文字は似ているところがあるので,これらの文字をアルメニアの学僧メスロプ・マシュトツ(Месроп Маштоц)の創作だとする説も,あながち否定するわけにはいかない [1]

文字構成

文字構成は,母音字と子音字の他に,2 つの記号で 1 つの母音を示す文字からなる。中でも [u] の音を示すのに,ギリシア語,それを模範としたスラヴ語系のグラゴル文字と同様に, [o] と [w] を示す記号を組み合わせている。これは,左から右へ書く点も含めて,ギリシア語を手本としていることを示している。このアグヴァニア文字は,グルジア文字,アルメニア文字,グラゴル文字同様,文字が数値を示すことでも共通している [1]

アグヴァニア文字 [2]

アグバニア文字表 [3]

アグヴァニア文字テキスト

サンプルテキスト

カフカス・アルバニア王国の台座

クラ川の水力発電所の建設の際に,アグバニア文字が刻まれた、カフカス・アルバニア王国の台座 (ミンゲチェヴィル) が出土した。

アルバニア文字が刻まれた台座 [Urek Meniashvili / CC BY-SA 3.0 / 出典]

マテナダラン所蔵のアグヴァニア・アルファベット表

アルメニア共和国エレバンにある世界有数の古文書館(公文書館)であるマテナダラン所蔵のアグヴァニア・アルファベット表(15 世紀。1937 年,Ilia Abuladze によって発見された。この手稿には,比較のためにギリシア文字などを掲載し,アグヴァニア文字には,アルメニア語で説明が記載された。

Ms. no. 7117, fol. 142v, [Naməlum / Public Domain / 出典]
アグヴァニア文字表 [Naməlum / Public Domain / 出典]

ウディ語

この文字を使った民族は,クラ川の上流の 3 つの村で話されているウディ語の話し手 (3,700 人) と見なされている。ウディ語は音素の数が 50 ほどあり,文字の数とほぼ一致する。また,アグバニア人の言語には喉頭音が多く,ウディ語と一致し,たまたま判明しているアグバニア語の月の名も,現在のウディ語の助けを借りれば理解できる。そこで,現在無文字民族であるウディはかつて文字を持っていたことになる [4] 一度文字をもった民族が無文字になったという珍しい例である。

テキスト入力

ユニコード

ユニコードでは,U+10530..U+1056F の位置にアグヴァニア文字が配置される。フリーフォント: Unifont Upper

関連リンク・参考文献

[最終更新 2021/11/08]