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【地球ことば村・世界言語博物館】

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世界の文字

クレタ聖刻文字 英 Cretan hieroglyph


先史時代のクレタで用いられていた最も古い文字形態で,その多くが人体や動植物,道具などを象ったかなり具象性の強い文字のために,発見者のエヴァンズ (A. J. Evans) によって「クレタ聖刻文字」または「ミノア絵文字 (Minoan pictograph)」と名づけられた。「ミノア象形文字(Minoan hieroglyph)」と呼ばれることもあるが,「絵文字」という呼称は現在ではあまり用いられない。→ 松本

この文字の起源をエジプトの「聖刻文字」や,小アジアやオリエントの文字と結び付ける試みもあるが,ともに成功していない。前 3 千年紀の後半から古宮殿期に移行する頃のクレタは,社会的経済的に文字の使用を必要とするほどの成熟度に達し,また,この頃からエジプトやシリアとの交流も開けて,これがクレタにおける文字の成立にとって大きな引き金になったと思われる。しかし,「クレタ聖刻文字」そのものは外部からの借用ではなく,現在では知られないもっと古い時期の土着の文字から発展したものと見るべきといわれる。

文字構成

現存する資料がきわめて零細なために,この文字の詳細はまだ明らかにされていない。エヴァンズは文字の形態に基づいてその分類を行ったが,そこで整理された文字の種類は全部で 135 である。しかし,その後まとまった資料が発見されるごとに新しい文字が加わっており,この文字の完全な文字表はまだ確立されていない。

文字の面から見ると,印章上の文字とその他の粘土製品上のそれとでは,前者がきわめて具象的かつ装飾的であるのにたいして(表の A),後者は柔らかい粘土に尖った器具で書き込まれ,そのために字形もかなり簡略化された線状的になっている(表の B)。

エヴァンズのクレタ文字表

この文字は「絵文字」というその名称にもかかわらず,のちの線文字 A線文字 B などと同じように,基本的にはすでに表音的な音節文字としての性格を備えていたという見方が,現在では有力である。オリヴィエ(Jean-Pierre Olivier)は,聖刻文字の中から音節文字の可能性があると推定して分類した文字の種類は,90 余りになっている。→ Olivier

オリヴィエの分類

数字

「聖刻文字」での数字の体系は,はっきりとした 10 進法で,部分的な改変を伴いながらも,基本的には,他のミノア系諸文字にそのまま受け継がれたと見られる。ただし,分数の表し方は,それぞれの文字体系でかなり異なっている。

クレタ聖刻文字テキスト

象形文字資料の年代は,その最古のものはクレタで最初の宮殿が築かれ始めた中期ミノア I の始め(前 2000 ないし前 1900 頃)まで遡り,それ以後「古宮殿期」の全体からさらに線文字Aが出現する「新宮殿期」にまでも及び,この時期は線文字 A と共存状態にある。ただし,この文字の最盛期は中期ミノア II~IIIa の頃で,それ以後は線文字 A が主流を占めている。→ ミノア文字年譜

サンプルテキスト

クレタ聖刻文字印章(クノソス出土)

これまでに発見されたこの文字の資料は,大部分が石,象牙あるいは金属製の印章で,その多くは 3 面ないし 4 面のそれぞれの面に,数個の文字が彫り込まれている。

その最も長いものは,中部クレタから発見された石製の 4 面体の印章で,全部で 40 余りの文字を含んでいる。行 a は左から右へ,行 b は右らから左へ,行 c は左から右へと牛耕式に記されている。(上掲 p 26 の拡大図)


クレタ聖刻文字封泥

封泥は,容器の口縁部などに封をするために使用した粘土のことで,表面に名前や称号などが刻されている。

封泥のなかで,最もよい例が次のものである。(上掲図 91)

クレタ聖刻文字ラベル

二枚貝の殻のような形で,紐で結び付けるための穴がつけてある。

クレタ聖刻文字粘土棒

様々な形の土器上に記された刻銘の資料として,粘土塊(cretulae),粘土製メダル,タブレットなどがある。このほかに,石や壷に記された断片的な記録も若干発見されている。

フェストス(Phaestos)で出土した粘土板。中央の線によって上下に分かれ,それぞれ左から右へ文字が刻まれている。

テキスト入力

クレタ聖刻文字の字形は,フリーフォント Aegean に収録される。 (非ユニコード)

関連リンク

[最終更新 2018/08/20]